疲れてしまったあなたへ《赤》

16.姉だからと我慢しているあなたへ ページ32

〆．



「お母さん！！お姉ちゃんが服貸してくれないの。酷くない？」



「A、リサに貸してあげたらええやないの。何着も持ってるやろ」



ずっと欲しくて、バイトを頑張ってやっと買った洋服。



「リサ、ショートケーキがいい！」



「A、リサがそう言ってるから好き嫌いせず食べなさい」



甘いものが苦手な私のバースデーケーキ。



「２色あるから、好きな方もらっときや」



「リサは赤色がいい！お姉ちゃん別に青でいいでしょ？」



お兄ちゃんから、私とリサの好きな色を選んで贈られた髪飾り。



気分屋で自分勝手な妹も、末っ子だからと甘やかす両親も、昔から苦手だった。



お姉ちゃんなんだから我慢しなさい、お姉ちゃんなんだからわがまま言わないで。



聞き飽きた言葉だった。



お兄ちゃんもそのことは前から気にしていて、だからこそ何ももめないようにと、



私の好きな赤色と、リサが好きだと言っていた青色の髪飾りをプレゼントしてくれたのに。



「………青も、綺麗だもんね」



パチン、と髪の束を留める。



青が嫌なんじゃなくて、お兄ちゃんの気持ちを踏みにじってしまったように思えて苦しかった。



「ただーいまー」



「あっ！お兄ちゃんおかえり！」



昨年の春から一人暮らししているお兄ちゃんはたまにしか帰ってこない。忙しいみたいで。



でも今日は私の誕生日だから、特別に帰ってきてくれた。



ちなみに、私の誕生日とリサの合唱コンクール優勝が同時期だったから今日はケーキが用意された。



ここ数年、誕生日をお祝いされるのはリサだけだった。



簡単に言うと、お兄ちゃんは私の誕生日のために帰ってきてくれたけど、両親とリサは完全に合唱コンクールのお祝い気分。



「おー、リサやん」



お兄ちゃんが帰ってきた理由はそこまで深く気にしていないようで、久々の再会にリサも両親も嬉しそうだった。



「………………ん、？」



お兄ちゃんはリサの服装と髪飾りを見、目をぱちぱち。



その後目が合って、私は苦笑いを返しておいた。



「リサのが、似合うから」



「でも……………、」



お兄ちゃんが私の肩越しにさらに見つけたのはショートケーキ。



チョコプレートには「合唱コンクール優勝おめでとう！」と書かれていた。



〆．

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