十七 ページ17
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潮屋長兵衛が用意した、迎えの駕籠(かご)で…
勝助が、相葉楼を出るのを見送った智之介は…
同じく、見送りに出ていた雅吉の方へ、顔を向けた。
「それでは…私も、家へ戻ります。」
「はい。お気をつけて…」
「ありがとうございます。」
雅吉に背を向けて、歩きかけた智之介は…
何事かを思い出して、雅吉の方へ振り返った…
「雅吉さん。」
「はい。」
「今度…善さんから、いい鯛が入ったら…あの鯛飯を、作って貰えませんか？ 潤弥にも、食べさせてやりたいので…」
「かしこまりました。いい鯛が入りましたら…必ず、お知らせいたします。」
雅吉は…
日だまりのような笑顔で応えると、智之介に頭を下げた。
「先生。お気をつけて。」
「はい。」
智之介も、雅吉に頭を下げた後…
ゆっくりと、歩き出した…
しばらくして………
「お帰りなさいませ。」
「ただいま。すまなかったな。」
「いえ。怪我をされた方の具合は、いかがでしたか？」
「あぁ。先刻、潮屋の御主人が迎えに来て、共に帰られたよ。」
「そうですか…よかった。」
潤弥は、笑顔を見せた。
「お風呂を、沸かしておきました。ちょうど良い、頃合いかと…」
「それは、ありがたい。」
智之介は、潤弥が用意してくれた桶に手拭いを浸し、足を濯ぎ…
家の中へ、歩を進めかけて…立ち止まった。
「風呂から上がったら、鹿沼様のお屋敷へ向かう。」
「はい。」
「今日から…鹿沼様の御嫡男である正二郎様が、泊まり込みで稽古をされる事になった。」
「承知致しました。」
潤弥は…
落ち着き払った様子で、智之介に頭を下げた………
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年6月8日 19時
