十六 ページ16
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翌朝………
ゆっくりと、目を開けた勝助は…
布団の脇で、己を優しく見つめている智之介に気づいた。
「おはようございます。」
「おはようございます…」
「痛みは…いかがですか？」
「あの…」
「はい。」
「ずっと…ついていて下さったのですか？」
「夜中に、少し…熱が、出ておられましたので。」
智之介は、そう言うと…
勝助の額に、そっと手を触れた。
「もう…下がったようですね。」
智之介は…安堵したように、勝助へ微笑(わら)いかけた。
「命が、無事で…本当に、よかった。」
「はい…」
勝助は…
布団から、上半身を起こそうとした。
「ご無理を、なさらない方が…」
「いいえ。」
勝助は…
痛みで、眉間に皺(しわ)を寄せながらも…
ゆっくりと…上半身を、起こした。
「この度は、誠に…ありがとうございました。」
勝助は…
智之介に向かって、深々と頭を下げた。
「よして下さい。傷に、障りますよ。」
「いいえ。貴方様が、いらっしゃらなければ…今頃………」
勝助の目から…
一筋の涙が、伝い落ちた。
智之介は、少し困ったような顔で…
それでも、柔らかな笑みを浮かべながら…
勝助を、見つめていた。
その時………
「失礼致します。潮屋様が、おみえにございます。」
「えっ…旦那様が……」
「お通しして下さい。」
障子が、開き…
雅吉の後から…
廻船問屋の、潮屋長兵衛が現れた。
「勝助！」
「旦那様…」
長兵衛は、勝助の側へ駆け寄った。
「傷は？ どうなんだい？」
「この方のおかげで、命拾い致しました。」
長兵衛は、勝助の視線の先にいる智之介に近づくと…
智之介に向かって、平伏(ひれふ)すかのように…頭を下げた。
「私、潮屋長兵衛と申します。この度は…手代の勝助の命を、お助け頂きまして…誠に、誠にありがとうございました！」
「頭を、お上げ下さい。私はただ…通りすがっただけですから。」
それでも、なお…
頭を上げようとしない、長兵衛を…
智之介は、困ったような顔で、見つめるしかなかった………
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年6月8日 19時
