side T ページ5
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いつの間にか、カウンターを離れていた浩志さんは…
Aさんの前に、一枚のガラスの皿を置いた。
「トマトとモッツァレラの冷製カッペリーニ。好きでしょ？」
「浩志さん、作ってくれたんですか？」
「ささやかだけど、バースデープレゼント。」
バースデー………だったんだ。
「そう、だった。すっかり忘れてた………」
「Aちゃんらしいね。」
浩志さんは、声を上げて笑った。
店内が、また…ザワめく。
「ありがたい事に、忙しくて。つい…」
そう言ったAさんも、愉しげに笑った。
そんなAさんを見ている俺の心臓は……落ち着きなく打ち続けていた。
「タカノリ、惚れたね。」
「いやっ！ べっ、別に、そんなんじゃ…」
「分かりやす〜い。」
BARの近くにある、馴染みの居酒屋。
時々、厨房を手伝いに来てくれる松本潤さんに…数日前の、Aさんとの出会いを話した。
「確か…マスターの知り合い、だったかな。」
「あぁ！ だから、“Aちゃん”…」
「………気になってんじゃん。」
潤さんな、何だか愉快そうに笑った。
「だけど…Aさん、タカノリよりかなり年上だぞ？」
「そう、ですよね。」
「…ハードル、高いよ。あの人は。」
潤さんは、大きな両眼でじっと俺を見つめていた。
「そうですよね……俺なんて、あの人から見たら“お子ちゃま”だもんな………」
“難攻不落の恋”……………
まさに、そんな感じ。
そう。
俺は、彼女に………恋をした。
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
