side YOU ページ25
・
「じゃあ…ブルドッグを。」
片岡くんは…
いつもの人懐っこい笑顔で、私を見た後…
雅紀くんの方へ、視線を移した。
「かしこまりました。」
雅紀くんは…
流れるような所作で、スクリュードライバーとブルドッグを仕上げ…
片岡くんの席と、片岡くんの隣の席へ、二つのグラスを滑らせた。
「Aさん、どうぞ。」
陽だまりのような笑顔の雅紀くんに、笑顔を返しながら…片岡くんの隣りの席へ、腰掛ける。
・
「ありがと。」
目の前に置かれたグラスを持ち上げ、片岡くんの方へ顔を向けた。
「お疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
お互いのグラスを合わせ、それぞれ口をつける。
「美味っ⁉」
片岡くんが、驚いた表情で私を見る。
「…でしょ？」
「はい！ めちゃめちゃ、美味いです！」
笑顔全開の片岡くんは…私から雅紀くんへと、視線を移した。
「有難うございます。」
雅紀くんが、片岡くんへ一礼する。
「Aさんはこの店、よく来られるんですか？」
片岡くんの両瞳が、再び私に向けられた。
「えぇ。片岡くんも？」
「はい。転勤した三年前までは、毎日のように通ってました。」
「へぇ…そうなんだ。」
「Aさんは？」
「私は…」
片岡くんの、邪気のないまっすぐな両瞳を受け止めきれなくて…手元のグラスに、視線を移した。
「三年前から…かな。」
口に出した言葉が…
あの日を、呼び起こした……………
・
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
