第四夜：『 HEALING 』 （MASAKI AIBA＆NAOTO） ページ24
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カウンターの、いつもの席に座った直後…気づいた。
今夜は…店内が、やけに騒めいている。
“オーナー、来てるんだって。”
聞こえてきた、誰かの声に…納得。
オーナーが来てるなら…無理もないか。
「いらっしゃい、片岡くん。」
一層大きくなった騒めきの中、現れたのは…オーナー・稲葉浩志さん。
「お久しぶりです、浩志さん。」
「久しぶり。元気？」
「はい、おかげさまで。」
「それは、良かった。」
浩志さんが、笑顔で俺を見つめている。
それだけで、店内の客……特に、女性達が歓声をあげる。
「相変わらず、盛況ですね。」
「有難いことに…ね。」
はにかんだような微笑みを浮かべた、浩志さんに…また、歓声があがる。
「片岡くん。何、飲む？」
「えっ…と……」
三年前によく飲んでいたカクテルを、数種類思い浮かべながら考えていたら……
「えっ…片岡くん？」
思いもよらない声が聞こえて、思わず振り向いたら…
「えっ…⁉」
職場の先輩・Aさんが、立っていた。
神代(かみしろ)Aさん。
俺の所属している第一営業部の営業事務で、俺のサポートをしてくれている人。
そして……………俺の、思い人。
・
「Aちゃん、いらっしゃい。」
「こんばんは。」
「何にする？」
「じゃあ…スクリュードライバーを、頂けますか？」
「了解。では、彼にお願いするね。」
浩志さんが指した、カウンター内の中央に…その“彼”は、いた。
「Aさん。いらっしゃいませ。」
「こんばんは、雅紀くん。」
“雅紀くん”に向けられた、Aさんの笑顔は…俺が、初めて見る表情で。
胸の奥が、ザワついた。
「片岡くんは？」
不意に、名前を呼ばれて…柔らかな表情のAさんと、目が合った。
「えっ…⁉」
「もう、頼んだ？」
「あっ…い、え…まだ……」
「雅紀くんのカクテルは、どれも美味しいわよ。」
そう言って微笑むAさんは…纏う空気まで、柔らかで。
当たり前だけど…
職場モードじゃない、Aさんが…俺には、メチャメチャ新鮮。
「……何？」
じっと見つめてしまっていたら、訝しがられた。(苦笑)
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
