第３夜：『 SURVIVAL 』（S SAKURAI＆K YAMASHITA） ページ18
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「あぁ〜っ！」
この場には、およそ似つかわしくない声をあげた、左側の男…山下健二郎。
「ちょっと！ 声が大きいから。」
「あ、すんません。せやけど、悔しいやないっすか。今回も、ヤツに…まんまと、してやられてしもて。」
「まぁ…ね。」
「これで、三件目っすよ。このまんま、続いたら…って、思たら……」
山下は、怒りを押し込めるかのように、目の前のグラスを呷った。
「山下の気持ちは、分かるけど。頭に血を登らせたら、それこそヤツの思うツボじゃない？」
「………Aさんは、ホンマ…いっつも、冷静っすね。」
山下は…拗ねたような表情で、私を見た。
「沸騰したって、解決しないでしょ。……ね？ 翔。」
カウンター越しのバーテンダー・櫻井翔に、視線を送る。
「まぁ…ね。」
「翔さんは、昔…Aさんのバディやったんっすよね？」
山下が、身を乗り出しながら尋ねた。
「もう、五年も前だけどね。」
「Aさん、その頃からこんな感じやったんですか？」
「山下！ “こんな感じ”って、何よ！」
「……ん。こんな感じ。」
「翔っ！」
愉し気に笑いながら、グラスを磨く翔。
彼のこんな笑顔を見るのは、久しぶりだ。
・
「……で？ 今追ってるのは、例の…？」
夜も深い時間………
他の客が誰もいなくなった店内に、心地よいJAZZが流れる中…
私に問い掛けた翔の顔には、もう…さっきの笑顔は、なかった。
「うん。」
私と山下が、追っている事件(ヤマ)………
連続通り魔殺人事件。
一週間前に、三件目の殺人事件が発生した。
「以前(まえ)の二件と、共通点が多いんっすよ。だから、連続通り魔の仕業やろう…って、見解になったんっすけどね。」
山下がまた、眉間に深いシワを作った。
「傷口の形状も、酷似してるわ。」
「……でも。」
翔は…腕組みした後、右手の親指を唇に当てながら考え込んだ。
これが…彼の、推理スタイル。
「確か…報道では、“傷口が二ヶ所”って…」
「はい。それが、唯一の相違点ですわ。」
山下が…険しい顔のまま、グラスに口を付けた。
「……………」
しばらく考え込んでいた翔が、私達を見た。
「煮詰まってるなら、一旦捨ててみれば？」
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
