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side H ページ13
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「初めまして。名雲Aです。」
「初めまして。登坂広臣です。」
お互い、初対面独特の笑顔を纏いながら、挨拶を交わした。
「A。」
カズさんの声で、カウンターを見ると…
Aさんの前に、いつの間にか…野菜のコンソメスープのカップが置かれていた。
「カズ…」
「空きっ腹にアルコールは、胃に悪いから。」
「……ありがと。」
「おぉ。」
カズさんは、照れ隠しなのか…手近なグラスを磨き始めた…………
それから………
三人で、いろんな話をした。
カズさんとAさんは、幼馴染みらしい。
実家が、隣り同士なんだそうだ。
やがて………
気付けば…店内の客は、俺とAさんの二人だけになっていた。
「お前、明日仕事だろ？」
カズさんが、彼女に問いかける。
「うん…」
「何？ 歯切れ悪っ！」
茶化すみたいな口調とは、裏腹に…
カズさんの顔には、Aさんへの心配が滲む。
「もうちょっと、飲みたい気分なんだよね。」
Aさんの言葉に、若干躊躇っているカズさん。
「じゃあ、後一杯だけ飲みませんか？」
「えっ？」
「俺も、もうちょっと飲みたい気分なので、付き合ってもらえたら嬉しいんですけど。」
Aさんの両瞳を、じっと見つめると…
「…じゃあ。」
心無しか、頬が赤みを増した気がする彼女の笑顔に…何故か、ホッとした。
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
