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「上等や、その勝負俺の勝ちで終わらせたる」
やっぱりそうか。なんか漫画で見た光景なわけだ。てか一人称俺かい。僕は偽りやったんかい。
「な、な、まーしぃもうらさんもやろうや!!!!」
「坂田のお願いならやるかぁ!!!!!」
甘いな。君友達とか身内にはごっつ甘いタイプだな。もうなんかお兄ちゃんの顔してるもん。てか助けてうらたさん。
「……まぁ、まーしぃがそういうなら」
甘いなぁ志麻さんに。ごっつ甘いなぁ。常識人だと思った私を返して。てか君ら友人のこと好きすぎでしょ。何その友情ちょっと私も混ざりたい。
「よっしゃああああああ!!!!!!!
てことでA、しばらくよろしくな?」
「……え、いや、私帰りますけど」
「いやもう友人ちゃんには事情伝えてチェックインしてもらったで」
早いな。ごっつ早いな。ツッコんでばっかだな。
なにもおかしくはないとでも言いたげな坂田さんの表情にもうなにも言いたくない。何を言っても無駄だろう。
「荷物は」
「フロントで預かってもらってるで」
どの質問も秒で返してくる坂田さんに執念を感じて恐れおののいていると、センラさんが私の肩を抱いて安心させようとしているのか「まぁ坂田はええやつやから許したってな?」と言った。
「センラ近すぎや、離れて」
「勝負はもう始まってるしぃ?」
この二人に挟まれるのはごめんだと思い、抜け出してうらたさんと志麻さんの元に行く。この二人といれば取り敢えずは安心だろうと落ち着いてしまう。これが大人の余裕ってやつなのだろうか。この二人の側で坂田さんセンラさんの煽り合いを眺めていると
あ、そうそうとセンラさんが私に向けてこう言った。
「今んとこ乗り気とちゃうけど、この二人はトップを争うぐらい独占欲あるし色々と気ぃつけや〜。俺と坂田とか比べたらミジンコレベルやで」
案外坂田は淡白やし。そう付け足したセンラさんの放った衝撃の事実に背筋が凍ったけれど、本気じゃなきゃいいわけだ。今二人私に興味なんてないんだから。仲間が大好きなんだから、私のことなんて眼中にないはず。
「…まあ、少しの間楽しみますか」
そう笑って不安を吹き飛ばしたこのときの私はこの後えらく志麻さんと気が合って部屋に通ったり、うらたさんからたくさんデートのお誘いを受けることになるとはまだ知らないのであった。
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作者名:shiyu | 作成日時:2022年9月4日 1時