32 ページ32
.
あっという間に男は連行され、事情聴取として私は警察と話をするはずだったものの、うらたの「疲れてるだろうから明日にしてください」という言葉によって、今はゆっくり休むように言われた。代わりに事情聴取を受けると言ったうらたのほうも、ゆっくり休むように言われ、今、うらたは私の家にいる。
「………ありがと」
「助けるのは当たり前だろ」
「でも」
「もう寝ろ、会社には電話しといてやるから」
そう言って私に背を向けて、敷き布団で寝そべるうらたに、ゆっくりと近付く。泣き止んだばかりだというのに、涙がまた一粒溢れた。
「……う、らた」
「っ……A、」
こちらに向き直って、手を広げるうらたに抱きついた。ぎゅっと抱き締めると、その分うらたも返してくれる。暖かくて、落ち着く。
「怖かった」
「逆に怖くないやつなんかいないだろ」
「…っうらたが来てくれて、よかった」
「いきなり連絡きたからびっくりした」
見てくれてたんだと思うと、 頬が緩む。泣いてるのか笑ってるのかわからないけれど、うらたに抱きついて、私は瞼をおろした。
▼▽▼
死ぬかと思った。死にかけたのはAだったのに。
Aの前髪をかきあげ、泣き腫らした目に触れる。冷やさなきゃ明日喚くだろうなと思い、保冷剤を取りに行こうと立ち上がるけれど、Aに手首を掴まれていて自由が効かなかった。
「……っ、ずるいやつ」
赤くなった頬を隠して、Aを横にする。離してくれない方の腕を出来る限り伸ばしてAと距離を取って寝転ぶ。
次第に意識が遠ざかるのを感じながら、俺は目を閉じた。
830人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2022年8月9日 11時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
こっぴー。(プロフ) - こんにちは!snrさんのヴァンパイアの方から飛んで来た者です!前作から一気読みさせていただきました…!めっちゃ好みです!更新頑張ってください! (2021年8月11日 11時) (レス) id: f811ca7a7d (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - 数話更新嬉しいです…!!!!このあとなんかおこるかな、どうかな、のワクワクでいっぱいです。これからも無理せず執筆してくださると嬉しいです楽しみにしてます〜 (2021年3月20日 13時) (レス) id: e761ef9cbb (このIDを非表示/違反報告)
ゆきか(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2020年10月12日 2時) (レス) id: 3dc25a2152 (このIDを非表示/違反報告)
shiyu(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年7月4日 22時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ