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恐怖で足がすくみ、立てなくなる。家を知られているとは、思わなかった。いつ知られたのだろうか。鍵のペアとか、作られていたら。鍵を、開けられてしまったら。
怖くて怖くて、視界が滲む。開けられたらおしまいだと思い、足に力をいれ、ふらつきながらも、息を潜めて玄関のチェーンロックを閉める。
気付かれないようにして、部屋に戻ろうとすると、声が聞こえた。
｢起きてるよね？｣
反応したら、だめだ。反応したら起きていることがバレてしまう。息を止めて、自室へと戻り、スマホを手にする。
｢う、うらた、う、ら…｣
慌ててうらたにメッセージを送るが、そう簡単には既読はつかない。いくつか送ってみても、反応はない。電話をかけても。
｢"電波の届かないところにい"｣
その言葉を聞いて、思わずスマホが手から滑った。その音に反応したのか、玄関近くから声が聞こえる。
｢…起きてるじゃん、開けてよ｣
開けるわけないだろ、ばか。
｢俺、鍵持ってるよ｣
それがどうした。
｢いない間に、スペアつくって、今日、完成したの｣
そう。
｢………入るよ？｣
あぁ、警察に、連絡しなきゃ。
震える手でスマホを掴み、電話をかける。繋がった時、涙が溢れて、上手く話せなくなった。どうしよう。何から言おう。
｢お邪魔しまーすって、なんだこれ｣
｢あ、あのっ、わ、たし、今｣
｢"落ち着いて深呼吸してください、何がありましたか"｣
｢チェーンロックかよ…めんどくせぇな｣
あぁ、チェーンロックなんか、すぐ、外される。このご時世、外しかたなんてネットに転がっているだろう。
｢知らない、おとこのひと、が、鍵を持って、はいってき、｣
｢"場所はどこですか？"｣
間に合わない。住所を溢したときそう思った。警察のできるだけ時間を稼いでくださいという言葉にも、返事ができずに、通話を切った。
｢…よし、開い｣
｢おいなにしてんだよ｣
聞き飽きた、安心感のある声。
｢は？またお前かよ邪魔すんなっ｣
そう言ってあの男は拳を振ったのだろう。しかし、それはうらたには当たっていない。現に、うらたの苦痛に耐える声が聞こえていないのだから。
｢……う、らた｣
｢今拘束してるから、警察くるまで部屋で待っとけ。絶対に、出てくるなよ｣
｢………うん｣
その言葉通り、私はパトカーがくるまでじっと部屋で待っていた。
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