ビターチョコは苦く、辛く【あほの坂田】 (ページ2)

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　｢…あ、れ？｣

いつも寄り道している公園に見慣れないテントが張っていた。それはまるで占いを扱っていそうな独特な雰囲気を醸し出していて、いつもは子供たちの声で溢れかえる公園も、今日だけは子供どころか大人すらいない。

全く、迷惑な商売野郎もいたものだ。

堂々とテントを張り付けているなら、きっと子供も大人も怖じ気づいて逃げたのだろう。テントに入るために必ずしや通らなくてはならない砂場には、子供の足跡が残るだけだった。

私は意を決して、テントの幕を上げて潜った。陰気でどこかカビ臭い臭いがすると思っていたが、漂う匂いは紅茶のダージリンの香りだった。陰気なんて雰囲気もなく、大図書館をシャンデリアと数多くのショーケースで着飾ったような、テントの中とは思えないほどの広々さと天井の高さだ。

いや、これはテントでは有り得ない。

なら、これは夢なのか、幻なのか。

けれどこれは夢でもないし幻でもない。現に私はここに立っていて、寝ているなら目を覚ますであろうほどのシャンデリアの光を浴びているのだ。

　｢……ようこそ｣

館内に響き渡った声に肩を揺らし、振り返ると。

そこには燕尾服を着こなした、深く帽子を被って顔を隠している男性がいた。