検索窓
今日:34 hit、昨日:1 hit、合計:78,428 hit

episode.109 ページ39

.




目を開けたけれど、重い身体は中々に動かない。あぁ、気持ちが悪い。重い腰をあげて、自室を出る。長い長い廊下もだんだんと慣れてくるもので、今では近いような、そうでもないような気がする。

 「…みんな、いない」

いつもなら誰かしらいるであろう部屋の扉を開けてももぬけの殻。なんならいる気配すらない。みんな、この船からいなくなったような。

 「みん、な?」

いつもなら誰かが飛んでくるのに。大丈夫か?って。助けを求めれば、すぐに来てくれるのに。

怖いよ。

 「…っみんな!」

久し振りの全力疾走は思ったよりも苦しくて、息がしにくかった。足も痛くなった。でもそれよりも、みんながいないことが苦しくて、次々に部屋の扉を開ける。

 「…ごほっ、ヴッ…」

咳をすると同時に軽く血を吐き出した。それが信じられなくて、座り込む。痛くないのに、血、吐いちゃった。血、吐いちゃっても痛くなかった。なんで。なんで。なんでなんで。

 「こわいよ…みんな、みんなぁ…っ」

いつからこんなに弱くなったんだろうと思い返そうとしても、思い出せない。なんで。なんでこんなに人の力を頼らなきゃ、生きていけなくなったのだろう。

 「やだ、やだよ…わ、たし」

こんなに弱いわけないのに。ずっと泣かずに生きてたのに。

 「こ、んなの、わた、し、じゃ…」

私、私。
その私って、誰、なの。

episode.110→←episode.108



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (135 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
837人がお気に入り
設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:shiyu | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月24日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。