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episode.75 ページ4

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 「…何して」
 「わかった、うん、わかったから…」


より一層強く抱き締めてくる坂田さんから逃れることもできず、行き場のない手をただ宙にぶら下げた。ほんのり血の臭いがする。前にうらたさんに刺された時の彼の血だろうか。この前のことを思い出しても、前よりかはさほど気持ち悪くはならなくなった。

これは、多分、彼に心を許し始めているせいだ。



 「…俺には、みんな、いる?」

 「いますよ、みんな、みーんな」

 「ほん、まに?」

 「居なかったら、みなさんこの船を降りてます」


すっと腕をほどいた後、彼は私をじっと見詰めてきた。彼には感情を支配されるようになっているのか、何故か目尻が熱くなる。



 「…ありがとう」

 「ありがとうなんて言うくらいなら、私をこの船から降ろしてくださいよ」

 「それは、嫌」



もう少しだけ、あとほんの少しだけ、この船に居てもいいのだろうか。彼らに呑み込まれる前に船を降りたい。そう思っていたのに。

もう少しだけ、居たい、なんて。

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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手
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巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shiyu | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月24日 14時

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