episode.95 ページ25
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それから、何かが狂ったように回り出した。
「A」
「うらたさん、どうしました?」
何事に対しても笑顔で接するようになった。
「A、ちょっと聞きたいことがあるんやけど…」
「はい、なんですか?…って、うわぁ」
面倒なことにもなんだかんだ言いながら取り組めるようになった。
「AA!俺今日実験成功してん!」
「じゃあ祝いのケーキ作りますか!」
人の喜ぶ顔が好きになって、人の達成を喜べる人になった。
良いことずくめ、のはず、なのに。何かが抜けているような気がしてならない。私にはもっと大切な、なにか、言葉で表せないような。
「…A」
「あ、センラさん。今日も夕食美味しかったです、御馳走でした」
「良かったわ、御粗末様でした」
でも、何故かセンラさんを見るとその胸騒ぎもなくなって、ある意味普通に接することができる。前の冷たい、人に興味がないけど、人にはちゃんと感謝する自分がひょっこりと顔を出すのだ。
「俺だけに冷たいなぁ」
「…何故か本能がそうするんです」
「俺のこと嫌いなん?」
「嫌いじゃないですけど、本能が嫌ってます」
「…よう、わからへんわぁ」
センラさんは、何か知ってる。私がこうやってセンラさんにだけ差別をしていることも。私の中で欠落した何かを。
いつか、教えてくださいね。
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巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)
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