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episode.87 ページ16

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なんてことも、昔はあった。その後は怒りと憎しみを抱いて、その一家全員も殺した。彼女も男も子供も彼女の両親も。みーんなみんな殺した。

両親が正しかったと気付くには随分と遅かった。

この身を手にいれてから、ずっと彼女を追い求めていた。いつか、殺される前に自分から殺そうと。絶対に、生まれ変わりを見つけてやると。


 「そうして来たのが、君や」


鎖で繋がれた両手両足を動かし続ける彼女を見詰める。その目は何かを訴えているようだが、言い訳は要らなかった。時間の無駄。俺に文句をつけるなんて、百年どころか、どれだけの時が経とうと許されない。


 「殺した相手がこうなって、どう思うん、なぁ」


がしゃりと動かした鎖にびくりと肩を揺らしながら、彼女は口を開いた。僵尺になった理由はそれだろうとか、僵尺の生まれ方についても彼女は詳しかった。



 「そんな怯えてんのに、頭だけは切れるんやなぁ」


俺を睨む瞳にぞくぞくと背中が感じている。これは高揚からなのか、彼女をついにこの手で殺せることに興奮しているのか。恐らく両方だろう。


 「俺のこと、埋葬もしてくれへんかってんな」

 「…それは、知らない」

 「自分は関係ないゆうんか、ほんま、笑えるわ」


彼女は先程まで此方に向けていた目を伏せ、俯き、ぽつりと話し始めた。それは全部全部、彼女と作った思い出であった。小さい頃に俺が彼女に飯をやったのがきっかけで、よく外で遊んでいた。その時は身分も関係なく、両親は見守ってくれていた。いつからだろうか。恋愛感情として彼女を見つめるうちに、両親が厳しくなったのは。彼女が孤立してしまったのは。



 「思い出なんて、いらんやろ」

 「そっか…」

 「悲しいのはこっちやのに、なんなんその目」


彼女の存在が煩くて、爪で引っ掻いた。彼女は動かなくなり、ただ俺を見詰めるだけになった。

どうでもいい。両親は正しいかった。彼女を恨んで当然だったのだ。両親を殺してしまったのは紛れもない俺だ。でも、彼女がいなければ。俺は両親と過ごせていたのに。仲良く、ナカヨク。


 「なぁ、死んでえや」


彼女の喉にナイフを突き立てた。

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巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shiyu | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月24日 14時

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