episode.86 ページ15
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とある昔話をしよう。
むかしむかし、あるところに仲の良い二人の男女がいました。彼らは幼馴染み。結ばれるのもそう遅くはありませんでした。互いに意識をし出し、男の子は告白をし、見事恋を叶えたのです。
幼馴染みと言えど、彼らは身分が違いました。彼女は貧しく、そして彼は大富豪の息子でした。頭の固い彼の両親は二人が籍を入れることを決して許してはくれませんでした。
そんな両親に心底怒った彼は彼女の手をとって、こう告げました。
「お金も身分も贅沢な暮らしだって要らない。君がいればそれでいい」
なんというロマンチックな台詞でしょう。けれど、彼女は全く心を動かされませんでした。それに気付かずその日は別れ、次の日。彼女は腹を立てていて、彼と縁を切り、何処か遠い国へと行ってしまいました。
彼は当然落ち込みます。けれど、決して彼女を恨みませんでした。自分の決心が足りなかったと毎日悔やむばかり。それを見た彼の両親は怒り狂いました。
「あんな身分のやつに自分の息子を一喜一憂させるなど百年早い。いや、どれだけの時が経とうと許されることはない」と。
彼女の家を突き止めた両親は乗り込み、文句を言い散らしたようですが、何故か上機嫌で帰ってきました。彼の頭をそっと撫でて、こう言いました。
「あの女は死んだ。だからもう悩まなくていい」と。
それを聞いた彼は両親を自らの手で殺めました。両親が隠し持っていた地図を使い、彼女の元に向かうと、美しい格好をした彼女が立っていました。
「どうしたんだいそのドレス」と聞くと、彼女はこう答えました。
「婚約相手がくれたの。何もくれなかったあなたは嫌い」
そう言って、彼女は彼をいかにも高そうなナイフで刺しました。苦しみ、視界が薄くなる中、抗議の声が聞こえる中、ずっと腹を踏まれていました。
彼は命を落とすまで、彼女の名前を心で呟き、愛してると言って死にました。
彼女は大富豪の男と結婚し、幸せな暮らしをしました。
めでたしめでたし。
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巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)
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