Crazy Moon ～騒ぎタテルごーすと～【浦島坂田船】 (ページ2)

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episode.73 ページ2

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　｢坂田さん…大丈夫、ですか｣

　｢……｣

あれからどれ程時間がたっただろうか。何度声をかけても彼は返事をしない。茫然と壁を見詰めて、ひたすら彼は涙を流すだけだ。さっきの威圧も狂喜さも何も感じられない。身体は脱力し、ベッドの縁に身体を預けている状態だ。

　｢…さかた、さん、ごめん、なさい｣

そう言っても、彼はまだ反応もしてくれない。それがいつもの坂田さんとはまるで違って、別人のようで、少し寂しくなってしまった。

彼の横に座って、静かに彼の頭を私の肩に乗せた。ここは私の親友の、あの子の特等席だ。いつも泣いたりしているときによく肩をかしている。あの子以外の場所になるなんて考えもしなかった。思い付きもしなかった。きっと、ずっとあの子の場所はここだって思っていた。

　(…どんどん蝕まれている)

そう実感するのは遅くなかった。実際にいつもの坂田さんが居なくて寂しいと思っている自分がいる。そして、あの子の特等席をかしてしまった自分もいる。なにより、彼を励ましたいだなんていう馬鹿な自分がいる。

横に目をやると、相変わらず壁を呆然と見詰める坂田さんがいた。

　｢…坂田さん、｣

　｢……な、ぁ｣

反応してくれた坂田さんに驚いて離れようとする。けれどいつの間にか私の腰には弱々しく手が回されていて、それを振りほどける程の悪魔は私の中にはいなかった。大人しく視線を送るが、相変わらず視線は交わらない。

でも、今漂う雰囲気は坂田さん独特の空気だった。

　｢なんですか｣

　｢もう…すこ、し…このまま、で、ええ？

………っあ、と、、話、聞いて、ほし｣

そう言った坂田さんに、返事代わりに頭を撫でた。