・ ページ32
.
｢じゃあ、いきまーす｣
｢よろしくお願いします｣
再生ボタンを押すと懐かしいメロディーが流れてきた。ドラムとピアノによる美しい流れるようなメロディーだ。
この頃はAが坂田家ということも、crewということも知らなかった。教えてないし、どうせ知らないだろうと思っていたが、流石俺の幼馴染み。何も言わなくても気づいていたらしい。
俺のことを見つけてくれていたのは、本当に嬉しかった。今は一番じゃなくても、その時は一番だった。それだけで嬉しいはずなのに。独占欲が俺の心を満たして、溢れて出てきてしまって。
息を吸って久し振りに見た歌詞を紡ぐ。そんな俺の手を静かにAが握ってきた。一回口が止まったが、もう一回歌い出す。どくどくと脈うつ心臓をバレないように鎮めようと静かに俯く。
｢坂田の高音って、いいよね｣
｢…そうか？｣
｢眠くなりそうな声…吐息混じりで、優しくて…すっごく好き｣
｢…センラより？｣
｢声はね、センラさんより好きだよ｣
寝惚けているからなのだろうか、彼女はとっても素直になっている。昔から本音は寝惚けている時にしか溢さない。ラスサビ前の間奏があけ歌い出したとき、手を握っていた彼女の手の力が抜けた。
最後まで歌いきって、手を放す。少しの温もりが消えただけなのに、大袈裟に俺の胸は締め付けてくる。触れる権利とは、何なのだろうか。俺は、触れていいのか。
｢僕は君の事が好きだけど、君は僕を別に好きじゃないみたい…か｣
この歌ってみたが好きだと言ってくれた。出た瞬間に聴いたと笑いながら、感想を伝えてくれた。その度に俺の初恋話を掘り下げて。
そんな変わらない彼女が好きだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
shiyu(プロフ) - りん。さん» 教えてくださりありがとうございます!! 定期演奏会が近く、忙しく更新が難しくなっているのですが頑張ります！ (2019年3月24日 0時) (
レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
りん。(プロフ) - コメント失礼します！最新更新の、僕の字が面白いことになってますよ！笑 毎回通知入れて読ませて頂いてます！これからも更新まってます！！ (2019年3月22日 23時) (レス) id: c02d0fc12b (このIDを非表示/違反報告)
ハゲつるマン@19830617(プロフ) - もでらーと。@坂田家さん» ありがとうございます！ 毎日更新目指して頑張りますね笑 (2019年1月4日 21時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。@坂田家 - いっき読みしてきました!更新楽しみにしてますね* (2019年1月4日 17時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハゲつるマン@19830617
| 作者ホームページ：なし
作成日時：2018年12月30日 23時
