【6】 ページ7
ひとしきり、泣いて………
二宮は…
ソファーから、上半身を起こした。
立ち上がると、冷蔵庫へ向かう。
そして…
冷凍庫から、冷却用アイマスクを取り出した。
“明日…撮影、入ってたからな………”
こんなに、涙を流した後でも…
明日の仕事の事を、考えられてしまう自分に…
少し、嫌気がさした。
自分が………
自分だけが………
この世界で、生きていることが………
苦しかった。
しかし………
自分自身の思いだけで、動くことなど…
今の二宮には、到底…無理な話だった。
自分の気持ちだけを、優先させるには…
今の環境と、責任は…
あまりにも、大きすぎるのだ。
“二宮和也”の気持ちなど、おかまいなしに………
“嵐の二宮和也”は、存在している………
二宮は、そのことを…
充分過ぎるほどに、理解(わか)っていた。
そして………
哀しいくらいに…
その環境に、順応出来てしまうことも…
よく理解っていた………
＊
＊
翌日･撮影スタジオ………
カメラマンの要望に応え、くるくると表情を変える二宮を…
大野は、静かに見つめていた。
やがて………
和:「お待たせ♪ 次、大野さんだから。」
智:「うん。」
大きくひとつ、息を吐いて…
手近な椅子に、腰掛ける二宮を…
大野は…まだ、見つめていた。
和:「………ん？ どうした？」
智:「………」
和:「何か、言えや。(苦笑)」
智:「………」
和:「何なの？(苦笑) ほら！ 呼んでるよ！」
微笑(わら)いながら、顎でセットの方を指し示す二宮を…
無表情のまま、見つめていた大野は…
やっと…セットの方へ、身体を向けた。
和:「リーダー。頑張って♪」
智:「ニノ…」
和:「ん？」
智:「今日…時間、ある？」
和:「何、何？ どうしたん？」
茶化すように言った、二宮は…
大野の…
いつもと違う雰囲気に…今朝から、気づいていた。
気づいていて…ずっと、はぐらかしていたのだ。
智:「飯、食おう。」
大野は、二宮の返事も待たず…
セットへ向かって、歩いて行った………
大野の背中を見送る、二宮の顔からは…
すでに…
笑顔が、消えていた………
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2011年1月26日 0時
