34話 ページ34
出発当日の夜、Aは移動用の馬車に荷物を乗せていた。
あっという間っだった3年間、もうここを去るなんて嘘のようだ。
あの日からAはロイドとリチェとは顔を合わせてない。
というよりも合わせられないのだ。
どんな顔をしたらいいのか、なんて声をかければいいのか、わからない。
(きっと怒ってるよな)
Aは荷物をロープで固定する。
(そもそもあんな事をした僕が、二人に会う資格なんてない)
本当は最後に謝りたかった。
調査兵団になって、活躍する事を期待してる、そしてどうか死なないで。
そう伝えたかった。
伝えたいと思うだけで、行動には起こせなかった。
(本当に駄目なやつだな…僕は)
自分の不甲斐なさに情けなくなる。
おそらくもう会う事はないだろうと、Aは思った。
例えその機会が巡ってきたとしても、ロイドとリチェが生きてるのかさえ分からない。
出発の時間が迫っていた、Aは兵舎に戻ること無く馬車に乗り込む。既に何人かは座って談笑していた。
後方の角に座る、硬い木でできた椅子は座り心地が悪い。
「さよなら、みんな」
Aは自分にしか聞こえないよう、小さく呟いた。
みんなの中には、ビートとダンもいる。
5人揃って夕飯を食べていたのを思い出した。Aはあまり会話に入る方ではなかった、4人の会話は聞いているだけで面白いし、楽しい。
馬鹿みたいに騒ぐロイド、はいはいと適当に流すビート、そんなやり取りにくすくすと笑うリチェ、ダンはビートにムキになるロイドをなだめる役だった。
懐かしい。
孤児院にいた時、Aは孤立していた。
別にそれでもいいと、寂しいとは思っていたかった。加えて薄暗い地下街で育ったAにとって、シーナは眩しく、過ごしにくかった。
12歳になって、訓練兵団に行く時、リチェに声をかけられた。移動用の馬車に一人先に行こうとするAにリチェは「一緒に歩こう」と隣を歩いた。
そしたら、それを見ていたロイド、ダン、ビートも、隣を歩いた。
その時、ぽっかり空いた何かが、満たされた気がした。
(あぁ…僕は自分から……心を空っぽにしたしまったんだな)
歩み寄ってくれた皆に、酷いことをした。
ほろりと、一滴涙が目から落ちる。ズボンに染み込み、生地が濃い色に変わった。
いつの間にか、馬車はガタガタと走り出していた。
Aは窓からずっと遠のいていく訓練所を、ただただ眺めていた。
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塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません！全然大丈夫です！! (2019年2月19日 22時) (
レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜！とっても面白いです！何と言っても設定が凄く好みです！!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか？ (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして！ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…！！続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やし野 | 作成日時：2017年12月17日 13時
