32話 ページ32
するりと、顎を抑えていない手がAの後頭部に回ってきた。
Aは何をどうすればいいのか分からず、間近にいるリヴァイの閉じられた目を見ていた。
触れ合う唇が熱い。
リヴァイは唇を離したかと思えば、角度を変えて再び触れ合うだけの口付けをする。
いったいどれほどそうしていたか分からない。いや、本当はほんの数秒だったのだろう。しかしAにはとても長く感じた。
「へいちょう」
思わず唇が触れたまま喋ってしまう。
「なんだ」
リヴァイもそのまま返す。
声が、吐息が、目が、あまりにも近い。
「なぜでしょうか」
その言葉に、リヴァイは薄く目を開くとそっと唇を離した。
Aは言葉を続ける。
「兵長、自分はよく女の子に間違えられます」
「ん」
言葉を投げ合う二人の距離は、ほんの数センチだ。
「しかし、自分は男です」
「そうだな」
「兵長は兵士長で、自分は訓練兵です」
「知っている」
「失礼ですが、兵長は男の人が好みなのでしょうか」
「いいや」
淡々としたやりとり。
「では、なぜでしょう…」
なぜ自分にこんな事をしたのか、理由がわからない。
「嫌か？」
リヴァイは静かに尋ねる。
Aは停止しかけていた頭で考える。この人と口付けをするなんて考えたこともなかったし、唐突なことで驚いた。
そもそも誰かとキスなんてしたことが無い。
しかし、不愉快には感じなかった。相手の唇から伝わる熱が、新鮮な感覚だった。
Aは小さく首を横に振る。
すぅ、と目が細められ、灰色を帯びたリヴァイの瞳が揺れた気がした。
「どうしてだろうな」
先程の答えだろうか。本人も何故キスしたのか分かっていないのだろうか。Aには分からない。
リヴァイの口元は微笑んでるようにも見えて、悲しんでるようにも見えた。
指の腹でA下唇を撫でる。
ぐに、と押しつぶしたり、感触を確かめるように何度も撫でた。
「A」
ほぼ空気のような、掠れた声でリヴァイは名を呟く。
「はい」
Aはリヴァイに合わせて、ひっそりとした声で返事をした。
それが面白かったのか、くく、とリヴァイが喉を鳴らす。
そしてまた、触れるだけのキスをした。
Aは否定することなく、今度は受け入れるようにまぶたを閉じる。
いつの間にか部屋の中には窓から夕日が差し込んでいる。部屋の家具と二人が、オレンジ色に染められた。
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塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません！全然大丈夫です！! (2019年2月19日 22時) (
レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜！とっても面白いです！何と言っても設定が凄く好みです！!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか？ (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして！ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…！！続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やし野 | 作成日時：2017年12月17日 13時
