28話 ページ28
「とりあえず座りたまえ」
その言葉に、Aは乱れた呼吸を整えながら、ゆっくりとソファに戻る。
「何故会いたいのかは分からないが、死刑人には親族、神父や牧師と言った者しか面会は許されない」
「………どうしても、ですか」
「ああ、国の法律でな」
「……死刑執行の日は」
「それも、先程の立場に当たるものにしか教えることは出来ない」
「…」
死ぬ前に会うことも、死ぬ日さえも知ることが叶わない。
Aの動揺した姿に、憲兵は言葉を詰まらせてしまう。何故自分をあのような酷い目に合わせた元に会いたがるのか、そして何故こんなに悲しんだ顔をしているのか、理解が出来ていないのだ。
ましてや喜ぶだろうと思ってたのだろう。
「…すみません、急に取り乱して」
先程とは違ってハキハキとした声だった。
「あ、ああ…いや」
「御用はこれで以上でしょうか」
「ああ…」
「では、お先に失礼します」
そう言うなりAは客間を早足に出ていった。
駆け足で出口の門まで歩く。
この感情をどうすればいいか分からない。
虚無のようでありながら、激動に駆られる。
とりあえず早く帰ろう、そう思い建物から出て門を出る。
来た道をひたすら歩く。何も考えられなかった。
「!」
余程周りが見えていなかったのか、調査兵団本部に差し掛かるとのろでドンッと曲がり角にいた者にぶつかってしまった。
ガタイがよかったのか、反動でにAは後ろによろけてしまう。しかしぶつかった当人だろうか、腕を掴んで支えてくれた。
「す、すみませ」
情けない声が出た。
「A?」
その声にAは はっと顔を上げる。
目の前にいたのは珍しく目を見開いて驚いた顔をしているリヴァイだ。
「ぁ……こっ、こんにちは、あの、すみません、失礼します」
今は誰にも会いたくなくて、上官にあたるリヴァイに挨拶しつつも素っ気ない態度を取ってしまう。ハンカチの事などAの頭の中にはない。
後ろの方にはいつの日か共に戦ったリヴァイ班の一人である、エルド・ジンがいた。
Aは早くこの場から離れたくてリヴァイが掴んでいる腕を引く。
が、
「あの 兵長 離してください」
離す気がないように腕を掴む力がこもった。リヴァイの表情は険しい。
「エルド、エルヴィンにさっきの報告書を渡しておけ」
「は、はい了解しました…」
リヴァイはそういうなりAを腕を掴んだまま歩き出す。
エルドは何が何なのか分からないまま二人の後ろ姿を眺めていた。
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塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません!全然大丈夫です!! (2019年2月19日 22時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜!とっても面白いです!何と言っても設定が凄く好みです!!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか? (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして!ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…!!続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2017年12月17日 13時