21話 ページ21
不意に背後から掛けられた声にAはビクリと肩を震わせる。
振り向くとそこには何故か私服のリヴァイ兵士長が入口にもたれ掛かるように立っていた。
「おはようございます!!!」
と、ブラシを右手に握り締めたまま拳を胸にドンと当てる。
咄嗟のため声のボリュームがおかしかったが、突然の人類最強の登場にAはそんな事気にしてる余裕がなかった。
「そんなでけえ声出さなくても聞こえる」
「…す、すみません」
「それ はいい、痛むだろう」
「え…」
それ、とは敬礼の事だ。
そして痛むという言葉の意味は、A自身の事のためすぐに分かった。お言葉に甘えてAそ腕を下ろす。
「知ってたんですね…」
「まぁな」
短く返される。
右腕の痛みはクィンタ区でリヴァイ班と共に行動した時に負った傷だ。これを知ってたからこの人は自分を前線から外したのかと、今になってAは気付いた。
「えっ、と……上官にご用でしょうか。今すぐにお呼びし」
「お前だ」
「……?」
「お前に会いに来た」
「え…」
「お前んとこのハゲ上官に、どこにいるか聞いた」
口調には大分棘があるが、声色には優しさが少し感じた。
「あの、自分に何か…」
視線を泳がせながらもたもたと喋るAにリヴァイは軽くため息を零す。
「馬磨きは終わったのか」
「大体は…」
「ちゃんとしてやれ、終わるまで待ってる」
「はい…」
くるりと馬の方に向きを変え、首から横腹にかけてブラッシングをする。
その間また髪の毛をついばまれたが、後ろにリヴァイがいると思うといつものようにじゃれてやれなかった。
満足いくまで磨きあげ、水と餌を補充してやる。フォークで汚れた藁を片付け、指定の位置に道具を戻す。
「お待たせしました」
壁に寄りかかり、腕を組んで待っていたリヴァイに謝罪と共に声をかける。
「馬小屋じゃあれですし…応接間にでも……」
「いや、いい、少しそこら辺を歩く」
そう言うとリヴァイはそのまま歩き出してしまった。
Aも慌ててリヴァイの後を追い、二歩斜め後ろを付いて歩く。
すれ違う兵士からの視線が少し痛かった。
ひそひそとリヴァイ兵士長だ、なんでここに、とこっそりと話す声も聞こえた。
当の本人はさも気にしていないようだ。
119人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません!全然大丈夫です!! (2019年2月19日 22時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜!とっても面白いです!何と言っても設定が凄く好みです!!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか? (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして!ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…!!続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やし野 | 作成日時:2017年12月17日 13時