帰り道 ページ36
｢どうだった、成績｣
予想以上に優しい口調に、動揺しつつも答える。
｢あ、え……わ、たしは…良かった、です。多分…｣
｢…オール5か？｣
｢え、はい｣
｢僕もだ｣
浅野と2人で歩いているせいか、周囲の視線が痛い。
とくに女子は、こちらを見つつ、ひそひそと何事か話しているのだが、目付きで内容が伝わってくる上に、Aにはその声すら筒抜けなのだから、なおさら居心地が悪くなる。
浅野もそれは同じなのか、少し不機嫌な顔で辺りを見回している。
｢…急ぐか｣
｢あ、はい…っ！｣
途端、いきなり手を握られる。
思わず顔を赤らめるが、浅野はそんな事お構い無しに早足で進んで行き、角を曲がって人通りの少ない路地に出た所で、ようやく手を離した。
｢…悪い。あそこから離れたかったんだが…｣
｢い、いや、大丈夫です｣
見れば、浅野の頬が少し赤い気がする。
Aが顔を覗き込もうとすると、浅野はついと顔を逸らし、咳払いをした。
｢行くぞ｣
｢あっ…待って下さい！｣
追いかけようとした瞬間。
気が動転していたせいか、目の前の段差に足を取られ、体が大きく傾く。
｢あ｣
段差の多い地獄では、毎日岩場を歩いていた為、この程度の段差で転んだ事はなかったのだが──
傾いた視界の中、そんな考えを巡らせながら、じきに襲ってくるであろう痛みに目をつぶる。
しかし。
｢お、前っは──ッ｣
｢え？｣
ぼふ、という音と共に触れた地面は、予想外に柔らかい。
目をあけ、それが地面ではなく──浅野の制服だということに、ようやく気付いた。
｢あ…っ｣
転びそうになったAを、助けてくれたのだろう。
しかし──傍から見ればその2人は、人目もはばからず抱き合っているようにしか見えない。
思わずぱっと顔を赤らめ、浅野から離れる。
｢す、すいません…っ!!!!｣
｢あーいや…こっちこそ…｣
浅野があからさまに視線を逸らす。
首を傾げるが、理由を聞く前に浅野が歩き出していた。
「…道は」
「え？」
「道はこっちで合ってるのか？」
不思議なことに、今日の浅野は、A組の支配者でなく、唯のハンサムな少年に見える。
「…はい」
彼の犯した罪は多い。
しかし、こうして向き合ってみると、その罪すらすぐに消えてしまうのではないかと思うほど、彼は素直で優しいのだ。
(改心してくれるといいな…)
心の中でぽつりと呟いた思いは、彼に届くだろうか。
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レズア - 面白くて一気読みしました！更新待ってます！頑張ってください！ (2020年3月26日 21時) (
レス) id: 992ebf245b (このIDを非表示/違反報告)
みなと - 初めまして、狐火さん。話の切り替え方なども読みやすく分かりやすいので、一気読みしてしまいました。キャラクターのブレはあまり無いように私は思いますし、心情の描写もとても綺麗ですね。尊敬します。無理せず、気が向いたらまた更新してくださると嬉しいです。 (2019年11月28日 16時) (レス) id: aa9b91acbd (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - あと業の口調「___だよ〜〜〜」のような口調です。少し女性のような口調です。けれど、「〜なのよ」の口調では、ないので気を付けて下さい (2019年1月20日 23時) (レス) id: d6d929f7e2 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 私あんまり、鬼灯の冷徹分からないので「」の上にキャラの名前の一部を付けてくださいますか？（例）赤羽「」みたいに。あくまで私自身の個人意見です。 (2019年1月20日 23時) (レス) id: d6d929f7e2 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり少女(プロフ) - 初めまして！めっちゃ面白いです！続きめっちゃ気になります！更新頑張ってください！ (2018年11月18日 22時) (レス) id: b0408dc810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狐火 | 作成日時：2017年4月11日 17時
