第5話 ページ5
Aside
竈門さんが帰ったあと、義勇さんは後ろから私の肩に頭を埋める。
『どうされました』
「…気を遣わせてしまったと、思ってな」
『大丈夫ですよ。竈門さん、素敵な方ですね』
「ああ言うのが好みなのか?」
『まさか、私は貴方だけですよ』
硬い髪を優しく撫でる。
「Aは優しいから、きっと数多の貰い手がいたかもしれないのに、俺と縁があって出会ったこと事態が奇跡に等しいと思っている」
義勇さんは消極的な性格があり、
時折それが顔を出す。
「俺は未熟なのに水柱を勤めるが故に、俺の刃は救いたい人の元には届かない。Aの人生さえ、俺は無駄にしてしまっているのかもしれない」
私は義勇さんの方へ向き、顔を両手で包む。
『よく聞いてください、義勇さん』
「…A…?」
『私は、貴方と婚姻を交わしたこと、後悔なんてしていません。私は貴方と出会えたことを嬉しく思っていますよ』
「……ああ………ああ、ありがとう……」
だからどうか、悲しい顔をしないで。
その言葉を出せず、私は微笑むことしか出来なかった。
数日すると、同じく柱を勤めてる煉獄さんの訃報、宇髄さんの引退。
義勇さんの精神は少しずつ削れて行った。
「…あの煉獄でさえ、死んだ…。上弦とはそれ程の強さという事だ、俺では……」
『義勇さん』
「それなのに、柱稽古で何をすればいいと言うんだ。未熟な俺に教えられることなんて」
『義勇さん』
「俺は」
『っ、冨岡義勇!!!』
俯く義勇さんを、無理やり私の方へ向けさせる。
『貴方は水柱に選ばれた!!貴方を選んだのは他でもない、御館様なのではありませんか!!その御館様の裁量を貴方は軽んずるのですか!!』
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作者名:あまんだ | 作成日時:2024年1月19日 3時