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104話 ページ8

「Aさん」

「安堂君?どうしたの?」

「ごめん」

そう言って安堂君は頭を下げる。ああ、本当に真面目だなぁ。安堂君は……私はそう思いながらこう言った。

「いいよ。樫野の為にやったことでしょ。もういいのよ。そんなことよりマカロン美味しかったわ。」

「でも……「ほら、もう行きなさい。樫野達が待ってるわ」

そう言って私は安堂君の背中を押す。安堂君は戸惑いながらも樫野達が乗っている救命ボードへと降りたった。

「ちょっと!Aさん!どういうことよ」

そう言って小城さんはマカロンを食べながら詰め寄る。……計画は失敗に終わった。砂糖と塩で見事なマカロンを作り上げ、それを『部下を思う優しいお嬢様!』という演出に仕上げたのだ。それは小城さんとゆうかシャトー製菓のイメージが爆上げしたらしい。(TV曰く)そう思いながら私はこう言った。

「…すみません。家のことはもういいんです」

小城さんは特に何も言うことはなかったが、やがて寂しそうにこう言った。

「真君は……天野いちごといる方がいいのよね」

と。こちらの発言は完全無視だ。まぁ……別にいいのだが。

「あー、もうイライラする。AA!この私に何か作りなさい!」

「え?あ、はい」

突然そう言うものだから私は頷くことが出来なかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……これはタルト?ああ、そういえばあんたの得意分野タルトだったわね。天王寺さんが言ってた気がするわ」

そう言って小城さんはフォークを持ちながらもそう言った。麻里……小城さんにそんなこと言ってたんだ……嬉しいような恥ずかしいような……?

「ん、美味しい」

小城さんはそう言ってバクバクと食べ、あっという間に無くなった。

「美味しかったわ」

そう言って小城さんはフォークを置きながらそういった。私はほっと胸を撫で下ろす。とりあえず機嫌は損ねてないようだ。

「何よ。その顔。ああ、そういえば家のことなんだけど……助けてあげるわ」

「え……?」

「このタルトのお礼にね。借りを作るのは好きじゃないのよ」

そう言って小城さんは『でも、今日は歯磨きしてもう寝るわ』といって去っていた。

そして……

「ほ、本当に助けてくれた……」

正直、冗談だと思ったが、翌日久々に兄貴から電話があり、『シャトー製菓に助けてもらった!』と電話してきたのだ。……小城さんは

「(本当にいい人だな)」

と、思いながら天井を見上げた。

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作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時

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