お花がここのつ ページ10
そう、それは中学1年生の春だった。
小さな雑貨店に学校からの帰り道に寄り、中学生になって初めてできた友達の誕生日プレゼントを買っていた時だった。
「動くな!!」
いきなり知らない男の人に手首を掴まれ、強盗犯だという人に人質にされてしまった。
すごく怖くて、ナイフが首に押し当てられ浅い切り傷もできてしまったものだから、私は何もできなかった。
店員さんがお金を詰めていく中、私はただ人質になってみなさんに迷惑をかける事しかできなかった。
助けて。怖い。
そうぱくぱくと声ではない声を出したときだった。
「はぁッ!」
とある一人の男性客が、強盗犯の後ろへ周り手刀を入れた。その次の瞬間に私を脅していたナイフは一蹴りで遠くへ飛ばされ、強盗犯は気絶した。
誰が通報してくれたのか、いつの間にか警察官がたくさん来ていて、私は長い間の緊張感と恐怖感から開放され腰が抜けた。
「きみ、大丈夫?怖かったでしょ」
そう、優しい声が頭上から降りてきたため顔を上げると、そこには声とすごく合っている優しい顔立ちの男の人がいた。
その男の人は私の手を握り、立たせてくれた。
だけど、
『っわ…!』
「おっと……少しずつでいいよ」
やっぱりよろけてしまって男の人へもたれかかってしまった。
どう考えても迷惑なのに、男の人は私を気遣ってくれた。
それがとても嬉しくて、思わずポロポロと涙を流してしまった。
彼は一瞬驚いたけど、頭まで撫でてくれた。
『ありがとう、ございます……っ』
こんなに優しい人がいたのか。
涙を無理矢理止めた私は、まだ目に涙の膜を作りつつも何度も何度もその人へお礼を言った。
***
事情聴取を終え、首の傷を手当された私は帰ろうと踵を返したとき、後ろに彼がいた。
「あ、来たね。きみを送る役割を変わってもらったんだ。
俺の名前は萩原研二。警視庁警備部の爆発物処理班ってとこに所属してる」
『爆発物……処理、班』
「そう。名前の通り、爆発物を処理する人だよ」
彼の名前は萩原研二。
爆発物処理班に所属してた。
連絡先、と渡されたのは、携帯の電話番号とメールアドレス。
「いつでも呼んでね」と笑う彼に『お礼をしなくちゃなので、必ず近頃お電話します』と笑い返した。
いつもの帰り道はなんだかすごく楽しくて。
10分あればついてしまう道のりは、なんだかとても短かった。
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しおらん(プロフ) - 凄くお話いいです。天界側が凄く大好きすぎます!!これからも頑張って下さい!! (2019年12月21日 20時) (レス) id: 7c779db0ef (このIDを非表示/違反報告)
あると(プロフ) - さとう。さん» さとう。さん、コメントありがとうございます!夢主ちゃんふわふわしていてお気に入りなので、そう言ってもらえると嬉しいです!!更新ぼちぼち進めていくので、ぜひよろしくお願いします! (2019年7月7日 0時) (レス) id: ea1d837737 (このIDを非表示/違反報告)
さとう。(プロフ) - とても面白いです…夢主ちゃん可愛すぎて……!!これからも楽しく読ませていただきます!! (2019年6月28日 6時) (レス) id: 15c53c1034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あると | 作成日時:2019年6月11日 22時