お花がいつつ ページ6
『…ん、あ…ろ…ん、安室さん』
「ん………Aさん…?」
Aさんの声で俺は目を覚ました。
久しぶりに何も考えず眠れ、まだ多少寝ぼけているものの大きく伸びをした。
脳が正常に動き始めると途端に香るAさんの甘い匂いに何かをずっと握っている己の手に気付く。
なんだろう、と思い自分の右手を見ると、誰かの手があった。
誰だろうなんて手の先を見ていくと、その相手はまさかのAさんだった。
これ、と視線を送る。
『ん?あぁ。安室さんなんだか手を握ってしまって。私のでいいのかなぁって思いながらもそのままにしちゃってました』
うわ。何をやっているんだ、俺は。
自分のよりも全然小さなそれは温かくて、爪先は整えられていて綺麗だった。
「すみません…寝ぼけてたみたいで」と言いつつその感触を確かめていると、なぜだかAさんに微笑まれた。
それがなんだか自分のことを大人として見られていない気がしてむっとなり指先にキスをした。
『え…』
「僕、大人ですからね?」
赤くなるAさんが愛おしくてどうしようもなくなり、はむっと人差し指を口に含んだ。
舌で舐めてみたり、ちゅっと吸ってみたり。小さく漏れる声に、「バーボンとしてハニトラとかしててよかった」と初めて思った。
バーボンならとっくに組み敷いていると思うが、今は真面目な安室透だ。そんな事してしまったらAさんからの評価も安室透も全部消えてしまうかもしれない。
それは嫌だな、と心の中で呟くと、Aさんが小さく声を漏らした。
『お、大人なのは分かってますから…!』
だからやめてください。ともはや泣きそうなAさん。もっとからかいたいという隠れたS心を押し留め「はい」とにこやかに笑った。
ふぅ、と乱れた心を落ち着かせているAさんを緩んだ顔で見ていると、ブー、ブーとスマホから電話が来た。
誰からかと思えば、ベルモットから。
これだから組織は、と内心ため息をつきながら別の部屋へ移動した。
「はい。僕です」
「こんにちは、バーボン。
今から30分後に指定の場所へ来て。仕事よ」
「はぁ…。分かりました。」
それだけ言うとベルモットは電話を切った。ベルモットは僕の事を何だと思っているのだろうか。
パシリか、足か。どちらにせよ最悪だが、そんなこと漏らしてしまえばいつの間にか頭が無くなっているかもしれない。
もう一度深いため息をついた。
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しおらん(プロフ) - 凄くお話いいです。天界側が凄く大好きすぎます!!これからも頑張って下さい!! (2019年12月21日 20時) (レス) id: 7c779db0ef (このIDを非表示/違反報告)
あると(プロフ) - さとう。さん» さとう。さん、コメントありがとうございます!夢主ちゃんふわふわしていてお気に入りなので、そう言ってもらえると嬉しいです!!更新ぼちぼち進めていくので、ぜひよろしくお願いします! (2019年7月7日 0時) (レス) id: ea1d837737 (このIDを非表示/違反報告)
さとう。(プロフ) - とても面白いです…夢主ちゃん可愛すぎて……!!これからも楽しく読ませていただきます!! (2019年6月28日 6時) (レス) id: 15c53c1034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あると | 作成日時:2019年6月11日 22時