*Temptation 9* ページ9
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天喰さんに会いに行けずあっという間に1週間が経った頃、
ただいま私のクラスは対人戦の訓練として、ヒーロースーツを身に纏ってグラウンドに集合していた。
『………はぁ、』
しかし残念ながら私には全くという程やる気が無く、天喰さんに会いたい気持ちだけが頭をぐるぐると回っていた。
このままじゃだめだ、集中しないと。
そう意気込んで、ぱん、と乾いた音を立てながら自分の両頬を叩いたが、
「神毒、御前は轟とだ。」
という相澤先生の言葉に、一気に思考回路が停止した。
『………え、うそでしょ、まじか…、』
ここに転校してきてだいぶ時間が経ったものの、轟くんとはあまり関わった事がないし挨拶を何度か交わした程度。
轟くんの実力はもちろん分かっているから、轟くんの相手になってしまった事が辛い。
「神毒。手加減は要らねえ。」
『…あ、はい、』
背後からのお茶子ちゃん達の応援に耳を傾けながら溜息混じりに轟くんと向かい合う。
大丈夫、やれるだけやる。
そう思っていたのも束の間、心の準備も出来ないまま開始の合図が。
そして同時に、パキパキと音を立てて地面を覆いながら勢い良くこちらに迫ってくる氷。
『…っ、近付けないじゃん!』
開始早々彼の個性から逃げるハメに。
なんてかっこ悪いのだろうか、という恥ずかしさと、視界の端に写った電気くんと切島くんと瀬呂くんのニヤけた顔に対するイラつき。
『ッ!覚悟しろよ轟焦凍ぉっ!……さんっ!』
「?おう、」
3人への怒りと自分の情けなさからの羞恥をパワーに変え、方向転換をして彼に向かって走り込む。
個性、発動、
身体から滲み出る薄い紫色の霧。そして微かに鼻を掠める甘ったるい香り。
「もっと近付かねェと"それ"は俺に届かねェぞ。」
『言われなくとも分かってんのよ!』
私の個性、"毒霧"は、身体から発生させた毒性の霧を自分の周囲に漂わせる事が出来る。
麻痺させる程度から、最大限の力を使えば恐らく致死量まで。
しかし欠点は、使い過ぎると酷い目眩が襲ってくること。
その前に確実に倒してみせるため、更に毒性を強めて濃い霧を発生させて轟くんの視界を奪い去る。
もちろん自分にも轟くんが見えないが、その霧の中で見つけた真っ赤に燃える炎。
熱風で霧を吹き飛ばすつもりだろうけれど、同時に私に居場所を教えているのと一緒だ。
『勝った…っ!』
脚が動かなくなったのは、その言葉と同時の事だった。
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はちみつ - めっちゃ環くん可愛い!続きお願いします、! (2018年10月16日 17時) (レス) id: 53b7ff09fc (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ぱふぇ - 環くんがめちゃくちゃ可愛いです! ついついニヤけてしまいました! (2018年2月25日 20時) (レス) id: d968ce28b5 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - キュンキュンさせて頂きました( ˇωˇ )スヤァ (2018年2月14日 16時) (レス) id: d47b400241 (このIDを非表示/違反報告)
するめ(プロフ) - リディア94さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!更新頑張りたいと思いますm(_ _)m (2018年1月30日 21時) (レス) id: 8ed0fe2229 (このIDを非表示/違反報告)
リディア94(プロフ) - ドキドキキュンキュンします!!更新楽しみです!応援してます!! (2018年1月27日 20時) (レス) id: df07763634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:するめ | 作成日時:2018年1月12日 19時