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*Temptation 18* ページ18

「目立つから場所を変えよう。」



天喰さんの後を黙って着いて行くと、何時ぞやの階段の踊り場に。

恐らくクラスメイトに私と話している姿を見られたくないのだろうな、と思案を。



『あまり教室に行くと迷惑ですか?』



目立ちたくないであろう天喰さんを気遣って、そう問うてみたのだけれど、



「大丈夫、嬉しいよ。」



控え目に笑みを浮かべてくれるものだから、それ以外は何も言わなかった。

同時に、嬉しい、と聞けて、安心感が広がった。


しかし何も面白い話題が無いせいか、2人の間を包むのは気まずい静寂で、私も天喰さんも口を開かない。

必死に思考を働かせて話題を探したが、代わりに出てきたのは轟くんからの応援メッセージで。


いつまでもぐずぐずしてないで天喰さんとの距離を縮めなきゃ。


最初に頭に出てきた提案は、



『…あの、……た、たまき、さん、って呼んでもいいですか…?』



苗字ではなく、名前で呼び合う事。


許可を貰うのは照れくさくて、中々彼と視線を合わす事が出来ない。

ちらりと伺い見た彼も、私の質問は予想外だったのか、どこか落ち着きの無い様子で。



「…も、もちろん、…君がそう呼びたいなら、好きに呼んでほしい。」



薄らと頬を赤く色づかせながら承諾してくれた彼に、きゅう、と嬉しさから胸が締め付けられる。

環さん、なんて、まるで長年付き添い続けた夫婦みたい。



『たまき、さん…、環さんも、私のこと、Aって呼んでください。』


「え、あ…、うん、分かった。

…えっと、………A、ちゃん?」



それはもうまるで、雷に打たれたような衝撃。

みるみる内に顔は真っ赤に染まって、口はぱくぱくと開閉を繰り返すだけで上手く声が出せない。


好きな人に名前を呼んでもらうのって、こんなにも幸福感に満たされるものなのね。



『環さん!もう1回お願いします、っ!』



思わず、彼の両手を掴んで3度目のぎゅう。

そして、不意の出来事に天喰さんも3度目の同じ反応で、びくりと身体を跳ねさせたいた。



「待って…、そんなキラキラした眼で見ないでほしい、」



背をのけ反らせて私から離れようとする彼を、離すまいと更に力強く手を握る。

爪先で立ち、ずい、と更に環さんへ顔を近付けると、



『呼んでください、…環さん、』



甘えるように、見つめる。



耳まで林檎のように赤く染めた彼は、観念したように息を吐き出して、



「……Aちゃん、」



と、願いに応えてくれた。

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はちみつ - めっちゃ環くん可愛い!続きお願いします、! (2018年10月16日 17時) (レス) id: 53b7ff09fc (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ぱふぇ - 環くんがめちゃくちゃ可愛いです! ついついニヤけてしまいました! (2018年2月25日 20時) (レス) id: d968ce28b5 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - キュンキュンさせて頂きました( ˇωˇ )スヤァ (2018年2月14日 16時) (レス) id: d47b400241 (このIDを非表示/違反報告)
するめ(プロフ) - リディア94さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!更新頑張りたいと思いますm(_ _)m (2018年1月30日 21時) (レス) id: 8ed0fe2229 (このIDを非表示/違反報告)
リディア94(プロフ) - ドキドキキュンキュンします!!更新楽しみです!応援してます!! (2018年1月27日 20時) (レス) id: df07763634 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:するめ | 作成日時:2018年1月12日 19時

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