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*Temptation 12* ページ12

『あの、っ…天喰さん!もう授業始まっちゃいましたよ、』



戸惑いと、不安で揺れ震えるその声はきっと眼の前の彼には届いているはずなのに。


どうして無視するの、天喰さん。


何も応えてくれないまま連れ出され、気がつけば沢山の花が咲き乱れる花壇が並んだ裏庭に来ていた。

何が何だかさっぱり分からないけれど、ただ天喰さんが若干怒っているのは雰囲気で分かる。



『っ、…あまじき、さん、』



恐らく自分が何か気に障るような事をしたはずだと今までの記憶を必死に探る。

思い当たる節なんて、1週間前の言葉だとしか思えない。


怒るほど、嫌でしたか。


そう聞きたくても、声は引き攣り、言葉の代わりに溢れ出たのは涙だった。

止まれと思えば思う程溢れて、制服に、乾いた地面に、ぼろぼろと落ちて薄らと染みをつくる雫。



『ぅ、っく…、あまじきさん、!』



未だこちらを振り向かない彼の制服を縋るように掴み、嗚咽混じりにもう1度彼の名を。

びくり、と微かに揺れ動いたその肩に咄嗟に制服を離してしまったものの、ようやく振り向いてくれた彼。



「え、……あ、…神毒さん、…ごめん、」



私を見た瞬間にまん丸に眼を見開いたかと思えば、先程の雰囲気とは一変、おどおどと慌てふためきながらの謝罪に内心ほっとした。

しかしまた余計に涙が溢れ出てくる。



「ほんと、すまない、…泣かせるつもりはなかったんだ、」



まるで壊れ物を扱うかのように、ゆっくり、躊躇いがちに、優しく頬へ触れる彼の手。

瞳から零れる雫を拭ってくれる所作に、頬から火が出そうな程熱が募る。


こんなの、ずるい。


恥ずかしくて、視線が合わせれなかったけれど、ちらりと盗み見た天喰さんも、顔が赤く染まり上がっていた。



『…ごめんなさい、泣いてしまって、』



その表情になぜか安心出来て、溢れ出ていた涙は次第に止まり、引き攣った呼吸も落ち着いてきた。



「いや、…謝るのは俺の方だ、

ほんと、怖がらせてしまって申し訳ないよ。」


『いえ、…確かに怖かったですけど、もう大丈夫です。

それよりも、天喰さん、…あの、どうして急にこんな所に…?』



濡れた瞼を制服の袖で拭いつつ問い掛けてみると、悩ましげに眉を下げながら私と距離を取った彼に首が傾く。

自信なさげにうろうろと彷徨う彼の瞳に、私が映る事は無くて、



「………自分でも、なんで君を連れて来てしまったのか分からない、


ただ、すごく、嫌だった。」

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はちみつ - めっちゃ環くん可愛い!続きお願いします、! (2018年10月16日 17時) (レス) id: 53b7ff09fc (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ぱふぇ - 環くんがめちゃくちゃ可愛いです! ついついニヤけてしまいました! (2018年2月25日 20時) (レス) id: d968ce28b5 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - キュンキュンさせて頂きました( ˇωˇ )スヤァ (2018年2月14日 16時) (レス) id: d47b400241 (このIDを非表示/違反報告)
するめ(プロフ) - リディア94さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!更新頑張りたいと思いますm(_ _)m (2018年1月30日 21時) (レス) id: 8ed0fe2229 (このIDを非表示/違反報告)
リディア94(プロフ) - ドキドキキュンキュンします!!更新楽しみです!応援してます!! (2018年1月27日 20時) (レス) id: df07763634 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:するめ | 作成日時:2018年1月12日 19時

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