*Temptation 2* ページ2
さよなら世界、なんて飛び降りをしたにも関わらず、
なぜ、今、私は、見知らぬ人の腕の中なのだろうか。
人生初のお姫様抱っこでAちゃんトキメク、なんて言っている場合でもない。
「ああえっと、ごめん、…怪我はない、かな?」
『あ、……はい、』
何に対しての謝罪だったのかは分からないけれど、ゆっくり私を下ろしてくれた彼。
そして、腕の赤い触手がみるみる内に普通の人間の手に変化していく。
なんて個性なのだろう、触手、なんて個性なのだろうか。
『……あの、ほんと、助けていただいて申し訳ないのですが、
…わたし、この世におさらばするつもりだったんですけど、』
そう言って、ちらり、と彼へ視線を向けた。
前髪とフードで顔はよく見えないけれど、中々のイケメンっぽい。
ふと、目が合うと、瞬時に顔を逸らした彼はわたわたと慌てた様子で、
そして、驚くくらい勢い良く頭を下げた。
「ご、ごめん…っ、…助けなきゃと思ってつい、…まさか本気で飛び降りしたいと思ってたなんて、
…ああもしかして、君の個性は強力で俺が助けなくとも大丈夫だったのか、…ああどうしよう、」
『………え、あの、ちょっと、』
どうしよう、この人勝手にネガティブモードになっちゃってるよ、
ああでもなんでだろう、
──────とても、かわいい。
『あの、謝らないでください。
助けていただいて、ありがとうございます、
……私、神毒、…しんどく、Aです。』
自己紹介なんて、いったい何時ぶりだろうか。
なんてぼーっと記憶を探っていると、おずおずと頭を上げて控え目に私を見る彼と視線が絡み合った。
「………俺は、天喰環、」
『天喰、環、さん…』
なんて事だ、名前までかっこいいなんて。
どうしよう、もっとこの人の事知りたい。
『すみません、どこのヒーロー事務所の方ですか?
わたし、あなたの事知りたいんです!』
思わず、がしり、力強く彼の両手を握って顔を近付けた。
──────────その瞬間、
「う、わ、うわっ…、初対面でこんなにがっつり来るなんて君怖いっ、
辛いっ、
帰りたいっ、」
『……え、』
私の手を思っきり振りほどいた彼は、大層怯えた様子で逃げ去って行ってしまった。
それはもう、追い掛ける、という思考回路を奪う程急な出来事で。
結局、彼の名前しか分からなかった。
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はちみつ - めっちゃ環くん可愛い!続きお願いします、! (2018年10月16日 17時) (レス) id: 53b7ff09fc (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ぱふぇ - 環くんがめちゃくちゃ可愛いです! ついついニヤけてしまいました! (2018年2月25日 20時) (レス) id: d968ce28b5 (このIDを非表示/違反報告)
ありす(プロフ) - キュンキュンさせて頂きました( ˇωˇ )スヤァ (2018年2月14日 16時) (レス) id: d47b400241 (このIDを非表示/違反報告)
するめ(プロフ) - リディア94さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!更新頑張りたいと思いますm(_ _)m (2018年1月30日 21時) (レス) id: 8ed0fe2229 (このIDを非表示/違反報告)
リディア94(プロフ) - ドキドキキュンキュンします!!更新楽しみです!応援してます!! (2018年1月27日 20時) (レス) id: df07763634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:するめ | 作成日時:2018年1月12日 19時