【実況者】本当の君。 (ページ18)

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神社という場所には、独特な雰囲気があると思う。
どこか厳かで洗練された、澄み切った空気に、スッと身体が軽くなる。
東京にこんなにも木に囲まれた大きな神社があることなど知らなかった。

「…っは、キヨさん健脚ですね…！」

本殿に着くまでにかなりの段数の階段を登った。
普段から運動などはしないデスクワーク人間の私にはキツかった。
だが、キヨさんはけろっとしていて、なんなら余裕までありそうだ。

「俺歩くの趣味なんだよ。ほぼ毎日散歩してる。」
「随分と健康的な趣味ですね…。」
「意外？」
「意外、と言えるほど私はキヨさんに詳しいわけではないので。私が知ってるのは、皆さんに元気を与える動画の中のキヨさんですから。」

私の言葉に、彼は目を見開いた。
それからその瞳をうろうろと左右に彷徨わせてからこちらをみる。
まるで叱られる前の子どものようで、少し微笑ましい。

「…み、見たの、俺の動画…！」
「はい。喋るのも、読むのも歌うのもとてもお上手なんですね。」
「……はっず…なんの動画見たの、いや、やっぱ言わなくて良い！」
「ふふ、ゲーム実況って見たことなかったんです。ゲームが苦手で…でも、自分でやらなくても見てるのはとても面白いなって。」

人差し指で自分の頬をかいて視線を逸らす彼に笑う。
彼が実況者であると知ったその日から、私は少しずつではあるが彼の動画を見始めていたのだ。

「…Aさんって、ゲーム嫌いなの？」
「嫌いじゃないですよ、でも、アクションゲームとかって難しくて。途中で進められなくなってやめちゃったりするのが続いたので、向いてないのかなって。」

動画を見た限り、キヨさんはどんな種類のゲームでもするするとこなしてしまう。
アクション、ホラー、シュミレーション、謎解き、育成…などなど、さまざまなゲームを楽しそうにプレイするその声は、視聴者を元気づけていた。
その証拠に、コメント欄を見ると、キヨさんに感謝するコメントや元気付けられたと前向きなものが多く、読むだけでも胸が温まる。

「だから、ゲームが楽しめるゲーム実況というジャンルに出会えてよかったです。」
「…嫌いじゃないなら、ゲームやろうぜ。」
「え？」

「難しいなら、俺と一緒にやれば良いじゃん。」

名案だ、と輝いた表情を向けるキヨさんに、私は思わず首を傾げてしまった。