【実況者】本当の君。 (ページ12)

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少し歩いて角を曲がった後、足を止めて改めてお礼を言おうとした。
しかし、背中を押すように添えられた手に戸惑いながら歩く。

「足、止めないでください。」
「え、」
「さっきの人、着いてきてるみたいなんで。」

清川さんの言葉に思わず息を飲む。
後ろを反射的に振り返ろうとしてしまったが、それは不自然すぎるだろうと思い直す。

「あ、三人ともさぁ、ちょっと店入っててくんない？人数は五人でー…ん？あー、後で説明するから。」

どうしようか、清川さんにこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないし、とぐるぐる考え込んでいればいつのまにか彼は誰かに電話をしていた。
とても砕けた話し方に少し驚いて、ぱっと見上げてしまった。

「そこの角の店入ります。待ち合わせの奴ら、男だけで肩身狭いかもしんないんですけどこのままじゃ危ないと思うんで。」
「え、あ、あの、そこまでご迷惑をお掛けするわけには…！」
「大丈夫ですよ、三人のうち二人既婚者だし。」
「ち、違います、心配してるのは清川さん達のお邪魔をしてしまう事で！」
「こんな時に女の人見捨てたらそっちの方が怒られるんで。」

いいからいいからと背を押されて入ったお店で、清川さんの背を追いかける。
案内された個室に、やはり気まずくなって帰りたい気持ちが湧く。
が、それを見透かしたように清川さんに腕を掴まれて、一緒に入ることになった。

「お待たせ〜！」
「お、来た来た。ごめんな、先飲んでるぞ〜。」
「よぉ、お前の好きそうなやつ頼んどいたからな。」
「っていうか誰連れてきたん……って、女の子？？」

女の子、と言われた後に三つの視線が集まる。
とりあえず会釈しつつ、その疑問にどう答えるべきかと困って清川さんに視線を送った。

「説明すっからちょい待ち。Aさん、俺の隣で悪いけど座って……ください。」
「ぁ、はい、失礼します。あと、どうぞ楽な話し方をなさってください…もしよければですが。」
「えっとじゃあ遠慮なく…口悪くなったらすいません。」

六人掛けのゆったりした席で、清川さんがぽんと隣を叩いた。
ずっと立っているわけにもいかず、頭を下げて腰掛ける。

「メニュー取ってー。Aさん今日飲んできたんすよね？もっと飲む？それともソフドリとかの方がいい？」
「…烏龍茶、で。」
「了解です。俺も烏龍茶にしよ。」