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軍司さんの謎の絡みを交わし、部長のご機嫌をとって、本店の人達からの視線をやり過ごした。
最後の方は、部長にお酒を注ぐペースを上げてお会計の後半ば無理やりタクシーに押し込んだ。
私のことも乗せようとしていたが、どうにか断ってタクシーのドアを閉める。
「お疲れ様。」
「…お疲れ様でした。」
タクシーを見送ってため息を吐く。
店の前で解散自体はしていたので、会社の人たちはそれぞれバラけていた。
私もさっさと泊まっているホテルに戻ろうとしたが、横にすっと現れたのは軍司さんだった。
「Aさん部長の相手で全然飲めてなかったよね、よかったらこの後どうかな?」
「…い、え…夜遅いですし、その、皆さんのお邪魔になってしまうと思うので…。」
申し訳なさそうな表情を浮かべながら、どうにか穏便に断ろうとする。
歓迎されていない歓迎会ほど参加したくないものはない。
そうすれば、目の前の彼はきょとりと呆けてから笑って一歩距離を詰めてきた。
「ああ、ごめんね言い方が悪かったかな。」
「え、」
「Aさんと俺と二人で、どうかな?」
そっと腰に回された手にゾッとする。
無意識に足が後退った事に気づいて意識して足を地面に縫い付けた。
必死に頭を回転させながら、愛想笑いを浮かべておく。
「お気持ちは嬉しいんですが…この後、東京の友人と会う約束をしてまして。」
「そうなの?こんな遅くに?」
「ええ、滅多に会えないのでどうしても会いたくて、」
「Aさん!」
だからすみません、と謝ろうとした声を遮って私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
反射的に声の聞こえてきた方へ振り返る。
そこには、見覚えのあるマスク姿の男性が立っていた。
「お久しぶりです。この辺で飲んでたんですね、もう皆集まってますよ。」
「…、お、ひさしぶりです。そうなんですよ、今からそちらに行こうとしてまして。」
「俺もこれから合流なんですよ、一緒に行きましょう。」
「はい、ぜひ。…すみません、軍司さんまた機会がありましたら。」
「あ、あぁ、うん。また、週明けにね。」
腰に当てられた手をさりげなく外して、こちらを待っている彼の元に駆け寄る。
こっちですよ、と誘導されるがままに並んで歩く。
ちら、とだいぶ高い位置にある横顔に視線を送った。
…まさか、もう一度会う事があったなんて。
「あの、ありがとうございます……清川さん。」
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A.M(プロフ) - minmiiさん» ありがとうございます。がんばります! (2022年9月30日 0時) (レス) id: 1b56a79d5d (このIDを非表示/違反報告)
minmii(プロフ) - ほんとに好きなお話です!応援してます♡ (2022年9月22日 0時) (レス) @page16 id: 8a547e8f1d (このIDを非表示/違反報告)
A.M(プロフ) - ぬん さん» 嬉しいです〜!ありがとうございます! (2022年9月19日 2時) (レス) id: 1b56a79d5d (このIDを非表示/違反報告)
ぬん - 最高過ぎます‼️ (2022年9月17日 21時) (レス) @page14 id: 02fb5e0a76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:A.M | 作成日時:2022年8月31日 0時