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「 ────Aちゃ〜ん♡ 」
最近バイト先によく来るこの男。
名前は宇髄天元。
『 なに 』
「 あは、つめたい。
そういうトコも好きだよ♡ 」
こうしてお店に来て、私のことをからかっては
反応を楽しんで面白がるのが好きらしい。
きっかけはなんだったか。
それはひと月ほど前に遡る。
午後10時を少し過ぎた頃、
私はバイト先から家に帰るところだった。
もうすぐ梅雨入りするとお天気お姉さんが言っていたとおり
蒸し暑くて、じめじめした夜。
早く帰ってお風呂入ろ、なんて考えながら
少し近道をしようと路地に入ったところで、
呻き声のようなものが聞こえてきた。
今思えばやめておけばよかったと思う。
ただ、バイト終わりで疲れて頭が回っていなかった。
深く考えず ただ近道をしようと路地に足を踏み入れただけ。
その奥、自販機のライトに照らされた地獄絵図に
数秒前の自分を殴りたくなった。
「 なーに見てんの 」
『 ・・・ッ、 』
煙草を咥えた背の高い男と
その足元に転がる血まみれの男数人。
呻き声の正体はこれだった。
『 ・・・その人達、大丈夫なの 』
「 あー?別に死んでもいんじゃね」
かひゅ、と変な息をしている人の腹を更に蹴る。外道。
不思議と怖いとは思わなかった。
殴りすぎてなのか 骨のところに擦りむいたような怪我。
もう誰の血かわからないくらい真っ赤になっていて。
『 ・・・これあげる 』
「 あ? 」
ポーチから絆創膏を取り出して彼に渡した。
「 コイツらじゃなくてオレに渡すんだな」
『 絆創膏じゃどうにもならないでしょ 』
見る人が見ればトラウマレベルの惨劇。
よく見れば歯が何本も地面に転がっていた。
「 もしかして、救急車でも呼ぶつもりか? 」
『 呼ばない。めんどくさいもん 』
早く帰りたいし。ほっといても死なないでしょ。
「 ははっ、面白いな 」
『 邪魔したならごめん、もう帰るから 』
暑い、眠い、帰りたい。
ばいばい、と 手を振って
もう二度と会わないはずだったのに。
「 あ、あの時のJKじゃーん 」
そのわずか2日後、奴はバイト先に現れた。
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れーと - ああもう…最高…素敵な作品ありがとうございます!!!! (9月7日 22時) (レス) @page49 id: f8da97e70e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - お腹いっぱいです。大満足。ありがとうございました。 (7月16日 19時) (レス) @page49 id: 19510e3ea2 (このIDを非表示/違反報告)
あんころ餅(プロフ) - 神作品過ぎます!!天元様と無事に会えるといいなでも世の中そんな甘くないか…笑 (7月16日 10時) (レス) @page38 id: 235e675cd4 (このIDを非表示/違反報告)
麦茶(プロフ) - めちゃくちゃ好きです…🥲💕宇髄さん格好よすぎる! (7月16日 2時) (レス) @page33 id: c33d2aaf12 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - めっちゃ好き……最高。神作。最高すぎる……宇髄さん、カッコよすぎ……好き……ありがとうございます。私は幸せです。 (7月15日 23時) (レス) @page33 id: 19510e3ea2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:檸檬 | 作成日時:2021年3月30日 22時