7 耐えらんない ページ7
すっかり冷えきった身体を
急いで暖めようと
暖房を付けた。
部屋の机の上に
乱雑に置かれた缶ビールの空き缶やつまみの袋。
それをさっと片付け
お風呂を入れた。
忙しいにも関わらず、翔さんは俺の我儘な誘いに付き合ってくれた。
また一つ冷蔵庫からビールを取出し、ソファーの前に腰を下ろす。
「珍しいじゃん。ニノがそんなに落ち込むの。」
そう、言われなかったら
気付かなかった。
ゴクッと一口飲むと、
はぁと溜め息が漏れた。
物があまりないこの部屋。
一人でこの部屋に居るのは
正直、耐えれる自信がなかった。
それで今日、仕事が一緒だった翔さんを誘ったけど．．．
やっぱ、止めとけばよかったな。
お風呂が沸いた知らせが聞こえ
着替えを取りにいく。
一昨日まで
一緒に居たのにな。
久しぶりにした恋に、
突然現れた、終わり。
自分でも驚く程、惚れてて
翔さんは誰よりも応援してくれてた。
別れて。と言われて
どうしようもなかった。
仕事が仕事だから。
大事な時に一緒に居てやれないなんて事、多々あった。
そんな俺が
引き止める？
無理でしょ。
多分、寂しいおもいも沢山させてきた。
洗面所の鏡に映る俺は
いつもとあまり変わらない。
だけど、ぽっかりと空いた心。
「もう、耐えらんないよ。」
哀しげな顔をしながら言われた。
何の前触れもなく言われた言葉に
「仕事なんだから、仕方ないだろ？」
と返した俺。
忙しくて、疲労が溜まってて、
ちょっと、苛々してた。
「やっぱ、覚えてないんだっ！！」
最初は何の事かわかんなかったけど、
後から気付いた彼女の
誕生日。
「そんなに仕事が大事？」
遂に泣き出した彼女に
何を言えばいいかわかんなくて、
呆然とそれを眺めてた。
「ニノらしくねぇよ？」
そうだね。翔さん。
本当、俺らしくない。
足先からゆっくり湯船に入れるとまだ少し冷えていた身体には
熱かった。
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作者名：希生 | 作成日時：2014年2月11日 18時
