6 チョコレート ページ6
バタン。と閉まった扉を背に
ひなちゃんの言葉の続きを思い出す。
いーなー。ずるーい。
しかも、そのマンション、
芸能人も住んでるって聞くじゃないですかぁ。
あの時は、嘘だぁ。
なんて、思ってたけど
うん。本当に居たね。
靴を脱ぎ、リビングの方へ足を進めながら
嵐？と考える。
あんまりテレビ見ないからなぁ。
アイドルだっけ？
あれ？何人グループだっけ？
考えれば考える程、次から次へと出てくる疑問。
二宮さん．．．だっけ？
失礼だよなぁ。私。
コートを脱ぎながら、
テレビの電源を入れる。
いつもは入れるだけで見ないんだけど．．．
丁度映った、デビル。
あっ、二宮さんだ。
だけど、そんなに気にならず
ご飯の用意をする。
冷蔵庫を開けると
悠斗にあげるはずだった
チョコレートの材料達。
バレンタインか．．．
また、チクリ。と痛みだす心。
悠斗の物。
捨てないとな。
部屋を見回すと
悠斗が使っていた
コップや毛布．．．寝室には部屋着だってある。
ふと目に留まった、
棚に飾られてる写真。
私。嬉しそうな顔。
いつ撮ったっけ？
写真を手に取り、そっと撫でた。
何が、いけなかった？
だんだんと手が震えだす。
視界も歪みだす。
まだ、こんなに好きなのに．．．
うぅ．．．。
口から漏れる。声。
小さな嗚咽は
テレビの笑い声に掻き消されていく。
うぅ．．．ぅっ．．．。
未練たらたらな私に
嫌気がさす。
今の私にこんな広い部屋は
寂しいよ。
辛いよ。
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作者名：希生 | 作成日時：2014年2月11日 18時
