39 決心 ページ39
「こんなにあったんだ・・・」
ダンボールの中に
パンパンに詰まった
彼のモノは、
思いのほか沢山あって、
3年。
という月日の長さを教えてくれる。
箱の中で隙間なく並んでいる
思い出たちが
少し、寂しそうに見えてしまう。
でも、心はなんだか穏やかで
優しい気持ちに包まれ
私は、そっと箱の中へと
右手を伸ばし
1番上にあった
紺色の部屋着
を、そっと撫でる。
「ふふっ、ほつれてる・・・」
さっきまで、寝室にかけてあった
部屋着は右胸の上辺りが
ぴょこんとほつれてて
人さし指で、クルクルと遊んでみたり。
自分でハンガーのフック部分に引っ掛けて
寝室から
うわっ、最悪だ！
これ、高かったんだよな〜。
なんて叫んでたっけ？笑
ふふっ
と、思い出して笑っていると
視界の端で
ペアリングがキラリと光り
ゆっくりと光の先へ
手を伸ばすと
色違いで並んだマグカップに当たってしまい
コツン、と音を奏でる。
全部、
全部、
いい思い出。
大切な
思い出。
もう、巻き戻せない
時間を
一つ一つ思い出して、
これで良かったのかな？
なんて
ちょっぴり悲しくなって、
だけど、
ちゃんと、いい思い出として残せる気がして
それだけで、
ちょっぴり、嬉しく思える
単純な私。
正直、
まだ好きだよ？
大好き。
思い出すだけで
心がきゅぅ・・・と
息が出来なくなるくらい締め付けられる。
だから、無理に忘れたって
苦しいだけだと分かっているから
時間が解決してくれる
その時を、待つ事にしたの。
翔さんが
大事にしたっていいんじゃねぇの？
と、教えてくれたから
だけど、だからって
これを今まで通りに置いてても
しょうがない。
きっと、
一生、前に進めない。
いつまでたっても、
1ミリも動かないモノたちを見て
時が止まってしまっている事を実感して
悲しくなるだけだ。
惨めになるだけだ。
私だけが1人
下を向いて生きていくなんてまっぴらで、
あぁ、そんな事もあったっけな〜。
アハハ。笑
なんて、話しながら大口開けて笑いたい。
長い長い人生の中の
ちっぽけな出来事の１つだったと
笑いたい。
そう、したいと
今なら出来そうだと
思わせてくれたのは
全部、
翔さんのおかげ。
翔さんの言葉が
私の背中を
ドンっと押してくれた。
箱の中で、ひしめく
たくさんの思い出たちに
別れを告げ
これからがまた
1からのスタートだと
そっと
フタを閉じた・・・
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作者名：希生 | 作成日時：2014年2月11日 18時
