13 涙、ぽろり ページ13
「なにやってんの？ほら、風邪ひくから」
にっこり笑って、部屋から覗く二宮さん。
悪いってわかってるんだけど、
ちょっと思っちゃった
大野さんはいないんだ。
二宮さんに言われた通り早く中に入ろうと
ヒールに手をかけるけど、
まだお酒が残ってて
薄暗い玄関でヨロヨロとしていると
私の両肩に大きな手。
「大丈夫？脱げる？」
ビックリして顔を上げると
顔の近さにまた、ビックリ。
「あ、櫻井さん！いや、大丈っ夫っです！」
慌てて顔を元に下げ
急いでヒールを脱ぐと
また聞こえる盛大な笑い声。
恥ずかしくて恥ずかしくて・・・
大丈夫かな？顔、赤くなってない？
「ほら、先行ってて？」
私のせいでまだ靴を脱げていなかった
櫻井さん。
つくづく思う、ごめんなさい。
周りをようやく見渡せて、
私の部屋とは逆の作りなんだ〜と
だけど、視界に入る
どう見ても女物の白い服
あ、見ちゃいけない。
と急いで視線を逸らすと
二宮さんと目があった。
気づかれた・・・？
不安な心とは裏腹に
にこりと微笑み
「ほら、寒いでしょうよ」
ってホッとした。
扉を開けて待っていてくれてる
二宮さんに頭をぺこりと下げて
通り過ぎようとしたら、
私にだけ聞こえるような大きさで
“こないだ、別れちゃったの”
なんて言うから
前に出そうとしていた右足が止まっちゃう。
「ごめんなさい、見るつもりじゃ。」
でも、二宮さんはずっと笑顔のままで
「いいのいいの。見えるようなところに置いてる俺が悪いから。笑」
そりゃ、アイドルだけど、人間だもん。
恋ぐらいするよ。
だけど、なんでかな〜
ファンでもないくせに、
やっぱり彼女がいたって知ると、
チクリと痛んじゃう。
アイドルにも恋人が・・・ってね。
「私もね、こないだ別れたばかりなんです。」
なんで、ほぼほぼ初対面の人に
こんなこと言ってるんだろう。
ふふっ、って笑ってみせるけど
やっぱり口に出すのはまずかった
今でも思い出しちゃうからあの日のことを。
机に突っ伏していたはずの相葉さんの声で
気づいたの。
「ニノ〜、女の子泣かしたらダメでしょ〜よ」
ハッとして急いで拭うけど
二宮さんはすごく驚いてて
「ごめん、大丈夫？」
突然のことでオドオドしてて、
可愛いって思っちゃった。
「なんで謝るんですか。笑
言わなくてもいいのに、勝手に言って勝手に泣いてるんですよ。私が。笑」
これでも、精一杯
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作者名：希生 | 作成日時：2014年2月11日 18時
