青空に溶ける君【完結】

36.け ページ38

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Aの病気について話を切り出せなくて
同意書はずっと、俺のデスクの引き出しの中。








毎日、悩んで苦しむ。
だけど、Aの方が俺よりずっと苦しんでる。









最近は、Aの病状が悪化してきて、いつ急変してもおかしくない。
少しでも命をつなぎとめておくために、オペをしないといけない。








──そのオペは、この先ずっと生きていくためのものじゃない。
今にも消えそうな命を、ほんの少しの間、つなぎ止めておくだけ。








でも、その僅かな時間に意味があると
昔、指導医だった先生に言われたことがある。









「…藍沢先生、なんか、最近顔色よくないです。…寝不足ですか？」

「…そうか？」

「休んだ方がいいですよ、たまには」









そう言ったAの方が、
俺よりも顔色が悪くて、見ていられない。








…やっぱり、オペをさせるべきだ。








「…A、」








そう思って、口を開いた時









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「──私…手術は、しません」









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ひどく寂しく──Aの声が響いた。







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