【完結】愛しき実験ハムスター〈２〉【名探偵コナン】

愛してください８５ ページ42

Aside




塔にはいると、自動で扉がしまった。

中には奥まで続くコンクリートの狭い廊下が一つ。

先は真っ暗で見えない。



暗闇．．．



心臓の脈が激しくなる。

いまだ一人で乗り越えられていない黒。


『とーる．．．』



後ずさりする足を無理やり止め、前を見据える。



手を繋いでくれる透はここにいない。

体を包んでくれる透はここにいない。



風は叫び、暗く狭い廊下を駆け抜ける。

見回しても、射し込む光すらないのに、何処からか不気味なほど大きな風が音をたてては去っていく。


暗い、暗い、暗い！！

とたんに呼び起こされる嫌な記憶。


自分でも薄々気づいてた。

普通の人間じゃないって。


それが今、確実な証拠と共に甦ってきた。

きっと透も、もう知ってるんだろうなぁ。



渦巻く実験の嫌な記憶。


これが作られたモノだと言うのはわかっていても、体が拒否反応をしめす。



息が荒くなり、脚から震えだす。

闇が視覚を奪い、ざわめきが鼓膜を塞ぎ、自分の立っている足元から崩れ去るような幻覚に囚われる。


暗い、怖い、悲しい、辛い。

ぐるぐると負の感情が体を支配するなか、脳裏に透の顔が浮かんだ。



《信じてるから！無事に帰ってきてくれ．．．！》



透は、私を信じて待ってくれてる。

私を信じて．．．待ってくれてる．．．！


『大丈夫！』


ガンガンと頭に鳴り響く警告音を振り切り、長い廊下を駆け抜ける。




ーーーーーーーーーーーーーーー
降谷side




サリトス「もし仮に暗闇を抜けれたとしても、爆弾まで行ける確率は上がらないよ。」

降谷「Aに何をするつもりだ！」



拳銃を構えたまま声を荒げる。



サリトス「君たちの絆とやらを試そうと思ってね。」


建物を見上げるサリトスの顔は、楽しげな遊びの顔。

A．．．！



再び大切なものを失う可能性が、キリキリと引き金に力を加えていた。

残る時間はあと３０分。

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