愛しき実験ハムスター【名探偵コナン】

愛してください２２ ページ22

灰原side




APTX4869を飲んで逃げているとき、
頭は姉とハムスターの事で一杯だった。



陽の元へ出してあげるつもりが、
巻き込んでしまったハムスター。



きっと明日には幹部に殺されている。



お姉ちゃんの殺される夢を見て飛び起きて、
ハムスターの殺される夢を見て飛び起きて。

工藤くんが組織と対峙するたび、
あるはずもない姿を探している自分がいた。



もしかしたら幹部になっているかもしれない、と。




そんなある日、ニュースで体が凍った。

淡々と読まれる内容は、空き家の爆発事故。


映ったのは、
アジトのひとつ、ハムスターの部屋がある場所。


いくつかある実験室の隣に、ハムスターがいたのだ。


狙ったかのように、全焼していた。
私の実験室、ハムスターの飼育小屋。


原因は古いガス缶から漏れたガスに
タバコの火が着火したと言っていた。


事故として処理されたそれが、
ずっと心にのし掛かっていた。


すでに殺されていたかもしれない。

でも、もしかしたら生きてたかもしれない。




どちらにせよ、あそこが無くなったと言うことに変わりない。




ハムスターが生きている確率もほとんどゼロに近く、
生存率は絶望的だった。



それから数日、江戸川くんからハムスターの名前がでた。



聞き間違えたと、
普通にそう思った。


聞き直そうとする前に、彼は出ていってしまった。




江戸川くんから呼び出された博士が戻ってきて、

一番最初に扉を開けたのは、

博士でも、江戸川くんでもなかった。



灰原「＿っ＿＿A！」



真っ白な頭で、何とか言葉を絞り出す。

ついに幻覚まで見えたかと思うほど、混乱していた。



上手く動かない足を交互にだし、
ハムスターに抱きつく。


この手の中に、ハムスターの存在がちゃんとある。



『＿＿し＿＿ぇ＿りーっ！』



話せるはずの言葉が上手く紡げず、
嗚咽となって口から出ていく。



『ぁい、たかぁ＿＿＿った、ぁ＿＿ぁあ！』



懸命に言葉を発するAにしがみつく。

夢じゃなくて、ここにいることを確かめるように。

強く強く抱き締める。



再開させてくれた２人は、
こちらを微笑ましそうに見守っていた。

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