鬼が好きな少女は。弐

玖拾肆 ページ44

「……んー……」

ゆっくり目を開けると無惨さんの顔が間近にあり、やっぱり少し驚く。
やはりこれは慣れない。

いくら目をつぶって、寝ている無惨さんであっても……


好きな方との顔の距離がこうも近いと心臓がドキドキし過ぎで痛くなる。


「無惨さん、私の事絶対子どもだって思ってる。」

扱いが子どもだ。絶対そうだ。
私、子どもっぽい所あるけどさ。


「私だってもう、立派な18です。別に抱きしめられながら寝なくても……」

私、無惨さんにとっては赤子なのかな？

毎回抱き上げられるし…


「…」

ジッと無惨さんの顔を見つめる。


相変わらず無惨さんの顔はとても綺麗だ。
ドキドキしてるのは私だけなのかな。


「無惨さん。」


名前を呼んでも寝ている為か、返事がない。

周りを確認し、誰も居ないはず！



「無惨さん、起きてます……？」


そっと呼びかけてみる。
が、応答はない。



……あと何回この寝顔を見れるのだろう。

あと何回無惨さんと一緒に寝られるのだろう。


あと何回抱きしめてもらえるのだろうか。



御館様は、無惨さんの所に居てもらっても構わないと文をくれた。
辛くなればいつでも来てくれて構わないとも書かれていた。
優しい御館様だけど、あの方は無惨さんは強く憎んでいらっしゃる。


そして、私に命を懸けて無惨さんを倒すのに手伝ってほしいと。




好きな方を倒す。

こんなにも大好きな方を殺す。

辛い。涙が出てきそうになるが、無惨さんの前で泣いちゃダメだ。
グッと堪えて無惨さんの頬を両手で優しく包み込む。

「大好き無惨さん。」


自然と体が動いて無惨さんの唇にキスをする。

そして、ハッと我に返った。



やっちゃった。



無惨さんに、



やっちゃった。



唇がめちゃくちゃ熱くなる。頬も触れた手も全身熱くなる。


「ななな、な……」


寝ている無惨さんに勝手にやっちゃった。


急いで布団から飛び出し走り出す。




「冷えてっ、冷えて…冷えて〜！！」


浴衣で無限城を走りまくる。
風がヒヤリと私の頬を冷やしていく。だが、それを上回る熱が私を襲う。



走って、無になろう。無惨さん寝てたしバレてない。大丈夫！絶対にバレてない！



「あ、熱いっ…全身熱いよ〜！！」



橙色のぼんやりとした明かりの中、私は多分真っ赤になっているであろう頬を押さえながら走りまくった。

鳴女さんが驚いていたのは言うまでもない。

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