鬼が好きな少女は。弐

陸拾陸 ページ16

「確かにAさんの前で鬼の話をした時、悲しい匂いと少し怒りの匂いはしていましたが、Aさんの話を聞いて納得しました。なので、怒りも何もありませんよ。」

「……炭治郎さんは心の綺麗な人なんですね。」

Aさんはまだボロボロと涙を流しながら言っている。

今だ。今聞こう…。
「……Aさん……どうしても教えてくれませんか。」

俺はもう一度Aさんに言った。



「鬼舞辻無惨について。」



そう言うとAさんは固まった。
やはりAさんは鬼舞辻無惨を知っている様子だ。最初にあった時も、今も。鬼舞辻無惨の匂いが微かに感じられる。




「…無惨さんは……優しい方です……。」


無惨さん…？
優しい方……？



「…Aさん…無惨は…アイツは炭治郎の家族を殺した鬼ですよ……。」

善逸が悲しそうに言った。



そして、Aさんを見れば……




「……。」


目が大きく見開かれ、涙だけがポロポロと流れていた。



Aさんはなぜ鬼舞辻無惨に生かされているか謎だが…少なくともAさんの言葉、反応から見て、Aさんは鬼舞辻無惨から大切にされているということが分かった。



「……無惨さんは人を殺したりなんてしない…です。」

「……無惨、アイツは……人喰い鬼を生み出した、鬼の始祖なんです。」
俺はしっかりとAさんを見て言った。



「………そっか。」
Aさんはそう一言言うと、手でグイッと目元を拭いて笑った。


「じゃあ……炭治郎さん。一つだけお願いしていいですか？」
不思議な雰囲気を放つAさん。


「もし、炭治郎さんが無惨さんの居場所を突き止めて、倒すってなった時、まず私を殺して欲しいの。」


「え……」


「私、無惨さんの味方だから。炭治郎さんとは友達だけど、戦うってなったら私は無惨さんに付く。だから、炭治郎さん達にとっては敵でしょ？」

「何言って……Aさんは人間ですよ、殺せないです。」



「…そうだよね。殺せないよね…。ごめんなさい。変な事言って。」

Aさんは、困ったように笑った後、



「私、炭治郎さん達の事無惨さんに話さないし、無惨さんの事も炭治郎さん達に話さない。どちらの情報も話さないから、戦うギリギリまで私と友達で居てくれますか…？」

「もちろんです。」

「……無惨は許せないけど、Aさんは可愛いから許します！」

「オレも……それで……いい。」


善逸達も頷くとAさんは嬉しそうに笑った。

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