#44 ページ44
side_Yugo
「今日で辞めるわ」
大我は思いつきのように、そう言葉を漏らした。
「…そっか」
そして俺は止めなかった。
大我がここに来てもう15年の月日が流れていた。
「止めないんだ」
「わかるよ。俺も歳近いし、いろいろ…」
30歳を過ぎ、
体には些細な変化が積み重なりつつある。
シワがちらほら見え始め、疲れやすくもなり、
酒にも弱くなった気がする。
「そろそろ世代交代かなって…」
大我…というより、
ジェーンは伝説と言えるほどの存在。
“男もネオンも振り返る噂の猫”、
それがジェーンの代名詞。
しかし時代は徐々に移り変わり、
男の目はそんな高貴な存在ではなく、
もっと簡単に手に入る女ばかりを見るようになった。
昔に比べればつまらない世界になった。
「…頑張ったよね、アタシ」
「うん。サボり魔ではあったけどね」
「それはご愛嬌でしょ」
そう言って大我はちびちびワインを飲む。
酒の量は変わっても、
姿形は何年経っても変わらない。
その美貌はそこら辺の若者よりもいくらも
優っている。
「…もう満足なの？」
「んー…満足は、ずっと前からしてた。
たぶん、アイツを捨ててやった時に…今思えば、
あの時が辞め時だったのかも」
「随分と過ぎたね」
「まぁいいよ。それなりに楽しかったし」
「そっか」
「…ありがとね。拾ってくれて…」
「何今さら、気持ち悪っ」
「感謝してんだよ？あの時拾ってくれなかったら…
アタシ、ずっと捨て猫のまま…迷い猫になって、
いつか死んでたかも」
大我らしくもなく、しんみりとそんな事を言う。
「…で、これからどうすんの？」
「別に決めてない。しばらくはゆっくり過ごすよ」
「北斗と？」
「もちろん」
大我は語尾にハートを付けた声色で答える。
どれだけ月日が経ってもこの二人の
ラブラブっぷりは冷めもせず、
何ならレベルアップしている勢いだ。
「北斗は知っての？」
「何となーく、そろそろ辞めるかもとは言った」
「北斗はなんて？」
「好きなようにしていいよって。
辞めた後のことは気にすんなって…
かっこよすぎてもう永遠に抱いてって感じ」
「はいはい」
大我の惚気が始まった。
時刻は深夜2時を過ぎた頃、
こんな時間帯に大我が誰にも抱かれていないなんて…
昔では考えられなかったことだ。
皮肉にも、大我がジェーンをやめると決めたことの
必然さを思い知らされた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
hana(プロフ) - 完結おめでとうございます。大好きな作品だったので、なんだかちょっと寂しいです…(´；ω；`)何度も読み直します！次回作も楽しみにしております！ (2020年4月20日 20時) (
レス) id: bf8187d250 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - 完結おめでとうございます！今回も楽しく拝読させていただきました。次回作もとても楽しみにしています！ (2020年4月19日 9時) (レス) id: 5839742182 (このIDを非表示/違反報告)
ばる∞(プロフ) - 完結お疲れ様でした！いつも更新されるたびわくわくが止まりませんでした。本当に素晴らしい作品をありがとうございます。次回も楽しみにしています(^^) (2020年4月19日 7時) (レス) id: 280528419c (このIDを非表示/違反報告)
たig - はじめまして。完結お疲れ様でした。この作品の更新をとっても楽しみに過ごしていました！さいか様の作品、すごく大好きなので次回作も楽しみにしています。 (2020年4月19日 6時) (レス) id: a0afc9d2fb (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 完結お疲れさまです！！いつもこの作品の更新を楽しみにしていました。次回作ができましたら、また見に来ますね！ (2020年4月19日 0時) (レス) id: 80de75d42c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2020年3月6日 0時
