84 ページ35
「潤くん、ありがとね」
「別に、俺は何もしてねーし」
照れた潤くんがわざと素っ気なく返してくる。
それすらもなんだかうれしくて、オレはその背中にわざと抱きついた。
「こら、重いっつーの」
「いいじゃん」
「よくない！」
潤くんが笑いながらオレを振り落とす。
そしてその隙にふいに言った。
「よかったな」
「…うん」
潤くんの言葉に一瞬固まったものの、すぐにオレもニッコリ微笑み返す。
席に着くと同時にチャイムが鳴って、窓の外からふわりと入ってきた温かな風がふいに頬を撫でる。
そういや、そこから眺めた先に相葉さんがいたんだっけ。
校庭のバスケットゴールに向かってシュートを放っていたその姿。
まだ肌寒かった頃を懐かしく思い出す。
たぶん、あれは一目惚れだったんだろう。
まさかこんな風に実を結ぶなんて、１ミリたりとも想像してなかったけど。
授業をはじめた先生の声が右から左へと耳を素通りしていく。
正直言って、今オレの頭は授業どころじゃない。
昨日別れる前に言われた相葉さんからのデートの誘いでいっぱいだった。
どこに行こう…何着て行こう…
そろそろ夏になろうかというのに、オレの頭はまさしく春真っ盛り。
そうだ、夏休みには櫻井さんや大野さんも誘ってまたみんなでどこかに行くのもいいかもしれない…
そう言ったら潤くんや相葉さんはどんな顔をするんだろう？
想像したら楽しくて、オレは授業が終わるのがひどく待ち遠しくなる。
泣いたり笑ったり、思春期真っ最中のオレたちはひどく忙しい。
勉強も、遊びも…そして恋も、一見くだらなくて無駄なものだって、きっと全部大事なもの。
授業では、遠い昔に起こった世界の果ての出来事を淡々と説明している。
それを聞きながらオレは、今の自分のことばかり考えていた。
The End
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 590人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LILY(プロフ) - はるさん» はるさん、こんにちは。読んでくださってありがとう(≧∀≦)２人の…いや５人の青春を一緒に楽しんでいただけて本当にうれしい！お決まりの美術準備室で５人ちまっと固まって、放課後お菓子でも食べながらお喋りしてる…そんな光景を脳裏に思い描いていただければ♪ (2019年5月12日 5時) (
レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - LILYさんこんにちは。ずっと読もうと思っていたこちらのお話を今日やっと一気読みしました！楽しかったです！こんな青春いいなぁ、やっぱり５人ってしっくりくるなぁ、にのちゃん可愛いなぁ、いいなぁ、といっぱい言いたいことが溢れちゃいます！ありがとうございました (2019年5月11日 12時) (レス) id: b3c5b647ee (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - summer snowさん» summer snowさん、こちらこそありがとうございますー！今でもまだ全開に可愛い黄色さんではありますが、高校生というのもまた…（笑）こんな同級生や先輩がいたら楽し過ぎる学生生活間違いないですよね♪最後の最後までお付き合いいただいてありがとうございました☆ (2019年4月23日 2時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
summer snow(プロフ) - 楽しかったわー可愛い黄色さんが目に浮かんだ。何時も、素敵なお話をありがとうございます。 (2019年4月22日 4時) (レス) id: 33f7808f3b (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - だんぼさん» だんちゃん、気づかずすっかり遅くなってしまった> <ごめんなさいー！コメントありがとう！！あっという間に番外編も終わっちゃったよー（笑）ほんと、くだらないことでワチャワチャして、それだけでもすごく楽しくて…そんな青春のカケラを感じてもらえたらうれしい♪ (2019年4月21日 8時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LILY
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/Colorfulstory/
作成日時：2019年4月6日 6時
