42話 ページ42
____A、
_____ねぇ、A
河底のような深い眠りの中、優しく手を引かれて水面に顔を出すような感覚。
薄ら目を開けると、傷だらけの無一郎君がいた。
「良かった、起きた」
「むい、ちろうくん…」
徐に、目の前にいる大好きな人の名前を口にすると、彼は私に覆いかぶさった。
「驚かさないでよ…」
なんで戻ってきたら、あんな浅い呼吸で目を閉じているの。と今の無一郎君は弱々しくて、とても上弦を倒した後の人とは思えない。
「…待たせてごめんね、A」
「今、名前…」
私は出来る限りの力で思いっきり起き上がった。
起き上がったものの口は硬直したまま動かなくて、
「無一郎君、」
無一郎君が少し眩しく感じる。
「太陽の光…」
そっか、終わったんだ。
私、生きてるんだ。
「時透さーん、うわぁぁA嬢!?」
「小鉄君…!」
「復活はやっ!!」
ギュッと小鉄君を抱きしめて頬をすりすりした。
生きてる、小鉄君生きてる。
「うっ…小鉄くぅ“ぅん”」
「Aじょー…!!」
「そばにいてくれてありがとうぅぅ…!」
「せめて看取るくらいはって思って…でも、生きてて良かったぁぁ“」
勝手に殺さないでよ、と小鉄君と私はわんわん泣いた。
「僕の時より嬉しそうだね」
「何に嫉妬してんですかあんた…」
「うるさい」
そう言って小鉄君を突っつく無一郎君は、面白くなさそうな表情をした。
「僕、飛びつかれて泣かれてない」
「面倒臭いですねこの人…」
「はっ飛ばすよ」
無一郎君は、ほら。とぶかぶかの制服を広げた。
「え、い、いいの…?」
オロオロと無一郎君を見つめると、彼は首を傾げた。
「なんの確認?…本当鈍臭い」
そう言って片膝をついて私を抱きしめる無一郎君。
鈍臭いって呆れているけど、困ったように表情を緩めている。
あぁ…夢見心地って、これのことかな。
「無一郎くん…!」
そんな通常運転だけど、また愛おしさが重なる彼を強く抱きしめ返して、私たちは地面に倒れ込んだ。
____
_
(もう会えないと思ったよぉぉ無一郎くんん…)
(嫌だよそんなの。)
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ジャンとアニの守り隊 - 久しぶりに鬼滅夢小説見たら面白くて宿題やらずに読んでしまった泣…神作品✨ (2月27日 23時) (レス) @page46 id: 3aa9af30d4 (このIDを非表示/違反報告)
蘭奈莉逢瑠悲@カナリア:ルカ(プロフ) - 天才作者様だ (6月15日 17時) (レス) @page30 id: 4d14879615 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - 深夜に見つけて読了したのがAM3:21!運命をかんじました!!そして苦しくて涙が出過ぎてただ今枯れてます😭めちゃめちゃ感動です…素敵な物語から幸せを頂きました!ご馳走様!ありがとうございました〜!! (5月16日 3時) (レス) @page46 id: 2d06e4d39c (このIDを非表示/違反報告)
8190506(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました…!一晩で書き上げてしまったと聞いて本当に驚きました…。でもそれを感じさせないほど素敵な作品でした…! (2022年4月2日 22時) (レス) @page46 id: 5a5b1fad70 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - しっかり泣きました!最高です (2021年10月16日 19時) (レス) @page46 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だむい | 作成日時:2020年3月31日 8時