32話 ページ32
「やめてください…」
脱力して畳にうつ伏せで転がる私は手を離して、とお願いするが、それにハテナマークを浮かべる無一郎君。
「同期に敬語なの?」
「やめて!!」
「なんで?」
「なんで!!」
あぁ言えばこう言う、と無一郎君を見ると、彼はパチパチ瞬くしていた。
「……あれ聞いて逃すわけないじゃん」
なんて言うんだっけ、こういうの。と首を傾げる無一郎君。
触れられてるのは足首だけど、頰と耳が熱くて、
「あぁ、思い出した。据え膳食わぬは男の恥?」
「ちがっ…」
そうでしょ?と私の顔を覗いてくるから、長い髪がカーテンの様になって襖からの光を遮った。
「そっか、僕は君に会ったことがあったんだね」
「ちょっと…ち、近い…」
無一郎君の匂いが鼻腔を擽って、心臓の鼓動が速すぎて大きすぎて、焦っているような惚けているような、不思議な感覚がする。
「さっき君の涙を見たときに何故か凄く困ったんだよね。普通なら鬱陶しいだけなんだけど…」
手を伸ばしたら届く距離なのに
少し身を乗り出したら、唇が触れる距離なのに
「もしかしたら僕は、君に惚れてたもかもしれないね」
「っ………」
それでもきっと、明日の無一郎君は何も知らない。
「なんで、そんなこと言うの…」
あぁ、なんて残酷な人なんだろう。
「また泣いてる」
「無一郎君が悪い…」
「……そうかもね」
こんなに好きなのに、こんなに近いのに、いつも私は拭いきれない不安を抱いている。
でも今だけは、どうかこのまま。
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ジャンとアニの守り隊 - 久しぶりに鬼滅夢小説見たら面白くて宿題やらずに読んでしまった泣…神作品✨ (2月27日 23時) (レス) @page46 id: 3aa9af30d4 (このIDを非表示/違反報告)
蘭奈莉逢瑠悲@カナリア:ルカ(プロフ) - 天才作者様だ (6月15日 17時) (レス) @page30 id: 4d14879615 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - 深夜に見つけて読了したのがAM3:21!運命をかんじました!!そして苦しくて涙が出過ぎてただ今枯れてます😭めちゃめちゃ感動です…素敵な物語から幸せを頂きました!ご馳走様!ありがとうございました〜!! (5月16日 3時) (レス) @page46 id: 2d06e4d39c (このIDを非表示/違反報告)
8190506(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました…!一晩で書き上げてしまったと聞いて本当に驚きました…。でもそれを感じさせないほど素敵な作品でした…! (2022年4月2日 22時) (レス) @page46 id: 5a5b1fad70 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - しっかり泣きました!最高です (2021年10月16日 19時) (レス) @page46 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だむい | 作成日時:2020年3月31日 8時